SAPと新たに提携、“真のデジタルスレッド”に向け拡張目指すシーメンスの戦略:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
さらに、これらで実現するデジタルスレッドの拡張の意味で「大きな提携だ」(ムロジク氏)と強く訴えたのが、SAPとの提携である。
ムロジク氏は「SAPはビジネスソフトウェアのトップ企業であり、インダストリアルソフトウェアのリーダーの1社であるシーメンスと組むことで、より広い範囲で共通のデジタルスレッドを構築できるようになる。製品開発からビジネスレイヤーまでデジタル環境で連携させることが可能となる。SAPとシーメンスでデジタルワールドを広げていく」と語っている。
ビデオメッセージを寄せたSAP エグゼクティブ・ボード・メンバーであるトーマス・ザウアーエシッヒ氏
また、ビデオメッセージを寄せたSAP エグゼクティブ・ボード・メンバーであるトーマス・ザウアーエシッヒ(Thomas Saueressig)氏は「シーメンスとSAPが協力することで、エンドトゥーエンドの製品ライフサイクルマネジメントを実現し、デジタライゼーションをさらに進めることができる。エンジニアリングの機能とビジネスの機能を結び付けることで、製品設計からオペレーションまで一貫したデジタルスレッドを実現できる。既に、シーメンスの『Teamcenter』とSAPの『S/4HANA』の連携に向けた開発を開始している。プロダクトライフサイクルマネジメントとアセットマネジメントを連携させることで、さらに高度なオペレーションが行えるようになる」と語った。
シーメンスとSAPの提携の概要(クリックで拡大)出典:シーメンス
具体的には、製品ライフサイクル、サプライチェーン、資産管理の各分野において、統合されたソフトウェアソリューションの構築を進める。SAPでは、製品データ管理の中核基盤としてシーメンスの「Teamcenter」を活用する。一方で、シーメンスはSAPの「SAP Intelligent Asset Managementソリューション」と「SAP Portfolio and Project Managementアプリケーション」を活用し、これらを組み合わせることで、製品やサービスのライフサイクル全体にわたり、新しい業務プロセスの実現を目指す。
ムロジク氏は「それぞれが補完関係にある完璧なアライアンスだ。真のデジタルスレッドを実現することにより、コストの削減や製品投入の早期化、顧客のフィードバックの活用など、さまざまな価値を実現できる」とアライアンスの意義について強調した。
シーメンスとSAPの提携における具体的な内容(クリックで拡大)出典:シーメンス
- 未来の工場像を“描く”ことを訴えたシーメンス、マインドスフィアはVWが採用へ
ドイツのSiemens(シーメンス)は2019年4月1日(現地時間)、ハノーバーメッセ2019でプレスカンファレンスを実施し、新しい技術群によりインダストリー4.0などで描かれるコンセプトがさらに拡張していけることを訴えた。
- エッジ強化を再度打ち出したシーメンス、マインドスフィアは段階別提案へ
ドイツのSiemens(シーメンス)は、ハノーバーメッセ2019(2019年4月1〜5日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において、新たに「インダストリアルエッジデバイス」などエッジ領域の再強化に乗り出す方向性を打ち出した。また産業用IoTのOSを目指すIoT基盤「MindSphere(マインドスフィア)」は段階別提案を強化する方針を訴えた。
- 産業用IoTのOS目指す「マインドスフィア」の現在地
工場など産業領域でのIoT活用には大きな注目が集まっているが、個々の企業でこれらのデータ収集、蓄積、活用の基盤を開発するには負担が大きい。こうした課題を解決する“産業用IoTのOS”を目指すのがシーメンスのIoT基盤「MindSphere(マインドスフィア)」である。開発責任者および日本での責任者の話を通じて現在地を紹介する。
- いまさら聞けない「エッジコンピューティング」
IoT活用やCPS進展の中で、あらためて脚光を浴びている「エッジコンピューティング」。このエッジコンピューティングはどういうことで、製造業にとってどういう意味があるのかを5分で分かるように簡単に分かりやすく説明します。
- エッジは強く上位は緩く結ぶ、“真につながる”スマート工場への道筋が明確に
IoTやAIを活用したスマートファクトリー化への取り組みは広がりを見せている。ただ、スマート工場化の最初の一歩である「見える化」や、製造ラインの部分的な効率化に貢献する「部分最適」にとどまっており、「自律的に最適化した工場」などの実現はまだまだ遠い状況である。特にその前提となる「工場全体のつながる化」へのハードルは高く「道筋が見えない」と懸念する声も多い。そうした中で、2020年はようやく方向性が見えてきそうだ。キーワードは「下は強く、上は緩く結ぶ」である。
- 工場自動化のホワイトスペースを狙え、主戦場は「搬送」と「検査」か
労働力不足が加速する中、人手がかかる作業を低減し省力化を目的とした「自動化」への関心が高まっている。製造現場では以前から「自動化」が進んでいるが、2019年は従来の空白地域の自動化が大きく加速する見込みだ。具体的には「搬送」と「検査」の自動化が広がる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.