DXの本質は「コトの起こる場作り」、東芝はCPSで何をしてきたか製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2020年07月17日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]
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CPS事業の展開に必要な3つのステップ

 東芝ではこれらのCPS事業を「理解」「試行」「展開」の3つのフェーズで推進。「東芝ではようやく試行から展開のフェーズに入ったが、それまでは社内で200回以上ミーティングなどを重ねて、DXについての共通認識を醸成していった」と島田氏は語る。これらの共通認識を作り出しながら、新たなビジネスの芽となるアイデアを集めるピッチ大会などを実施し、現在は31のテーマを実践テーマとして進めている。

photo DX展開の3つのステップ(クリックで拡大)出典:東芝デジタルソリューションズ

 その中の1つが、東芝テックのPOSデータをベースとし東芝データがデータサービスを展開する「スマートレシート」である。これは、流通小売業の実店舗における生活者のレシート情報を収集・分析して価値ある情報に変え、ニーズに合ったクーポンなどを付加価値として消費者に還元し、小売店に集客や売り上げ拡大をもたらす事業モデルである。「2019年度は2000店舗で展開したが2020年度では10万店舗に拡大する計画だ」と島田氏は述べる(※)

(※)関連記事:なぜ東芝はデータ専門子会社を作ったのか

photo スマートレシートの拡大計画(クリックで拡大)出典:東芝デジタルソリューションズ

 また「CPSやIoTを使える環境を広げる手段を提供する」(島田氏)として取り組んでいるのが「ifLink」である。「ifLink」は、TDSLが独自開発したIoTプラットフォームで「ドアが開いたら(IF)、ライトが光る(THEN)」のように、IF-THEN型の設定で簡単にIoTが活用できることが特徴だ。プログラミングが不要で、接続できればスマートフォン端末で設定できる。

 さらに、これらをより広げるために「ifLinkオープンコミュニティ」を設立。このifLinkをオープン化し、さまざまな業界、団体の人々が垣根を越えてつながることを目指している。既に約100社が参加しておりさまざまなプロジェクトが進んでいるところだという(※)

(※)関連記事:東芝が“真にオープン”なIoT団体設立、「誰でも作れるIoT」に向け100社加入へ

photo とにかく簡単にIoTの設定ができることが特徴。スマートフォン端末でカードを作成するだけで画面下部のように「IF」と「THEN」の条件が設定できる(クリックで拡大)出典:東芝デジタルソリューションズ

 自動車開発の現場に向けては、さまざまな分散環境でさまざまなシミュレーションツールを連携させてシミュレーションできるようにした分散・連成シミュレーションプラットフォーム「VenetDCP」を発表している。これは東芝が自動車のCANのシミュレーターを展開してきた知見を生かす一方で発想を転換し「『自動車全体をシミュレーションできないか』と考えて開発したものだ」(島田氏)という。

 それぞれのサプライヤーでモデル化されたデータをつなぎ「VenetDCP」上でデジタル試作やシミュレーションを行えるようにしている。「ポイントはVenetDCPはあくまでもツールを組み合わせて使用できる場を提供しているだけで、シミュレーションツールそのものは他の専門ベンダーのものを使えるという点だ」と島田氏は強調する(※)

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photo 「VenetDCP」の画面イメージ。それぞれをつなぐ場としての役割が特徴だ(クリックで拡大)出典:東芝デジタルソリューションズ

DXのポイントは「場を作る」ということ

 日本企業のDXへの取り組みは海外に比べて遅れていると指摘されることもあるが、島田氏は「日本の製造業のかつての成功パターンは、顧客にぴったり合う“ソリューション”を提供するというものだった。このソリューションという発想では、DXで示されているような新たなビジネス創出は難しい。『モノ』から『コト』へというよりも『コトが起こる場を作る』というのが正しいアプローチだ。そういう場を作り、そこが本当に多くの人に使われるようになれば、結果的にDXにつながる新たなビジネスが生まれる。実は多くの企業がそういうチャンスを抱えているのに気づいていないということがある」と島田氏は考えを述べる。

 さらに「そういう発想に立てばオープン化の重要性が見えてくる。東芝ではifLinkもオープン化し、スマートレシートも無償化している。これは『使われる場を作る』という考えからだ。そこに踏み込むかどうかが、DXやその中で重要なプラットフォーム化の実現の成否につながる」と語っている。

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