コンパクトブレーカ販売20周年、成長続くパナソニックの電路事業のモノづくりモノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

新築住宅着工件数が減少傾向にあり、国内の住宅設備関連市場は厳しい状況が続いている。そうした中でパナソニックの住宅盤、電設盤、ブレーカなどの電路事業は、直近10年間でシェアを10%伸ばし、市場の半分を占めるまでに拡大した。2019年度に約450億円を記録した販売額を2030年度には1.8倍の800億円前後に引き上げる方針だ。

» 2020年06月30日 11時00分 公開
[長町基MONOist]

 新築住宅着工件数が減少傾向にあり、国内の住宅設備関連市場は厳しい状況が続いている。そうした中でパナソニックの住宅盤、電設盤、ブレーカなどの電路事業は、直近10年間でシェアを10%伸ばし、市場の半分を占めるまでに拡大した。市場ニーズにフレキシブルに対応する製品づくりなど同社の強みが実績に反映したものだ。同社では今後、国内では堅調に推移するリフォーム需要を軸に、また海外では新規市場の開拓に取り組み、2019年度に約450億円を記録した販売額を2030年度には1.8倍の800億円前後に引き上げる方針だ。

電路カテゴリーのグローバルマザー工場

 パナソニックで電路カテゴリーの事業を担当するのはパナソニックスイッチギアシステムズ(PSGS、矢尾和基社長)。前身は旧松下電工の瀬戸工場で、後に別会社化や拠点統合などを経て2018年4月に当時の連結会社2社が合併し発足した。パナソニックエナジーシステム事業部傘下のパワー機器BU連結会社にあたり、電路カテゴリーのグローバルマザー工場として位置付けられている。海外拠点については、パワー機器BUの配線カテゴリーと共に運営しており、生産拠点として中国、インド、ベトナム、トルコなど8カ国(8工場)を構え、販売は11か国で展開している。

photo パナソニックスイッチギアシステムズ瀬戸拠点の外観(クリックで拡大)出典:パナソニック

 PSGSが国内で生産しているのは、住宅盤(住宅向け分電盤)、電設盤(非住宅向け分電盤)ブレーカなどだ。海外は現地でDINブレーカ、HBブレーカ(安全ブレーカ)などを生産(地産地消)し、一部製品は国内から輸出する。ブレーカは、過電流や漏電など電路の異常が発生すると、回路を自動的に遮断する装置であり、住宅分電盤は、複数のブレーカを搭載し、家庭内のコンセントや電気機器に安全に電気を供給する。

photo パナソニックスイッチギアシステムズ 代表取締役社長の矢尾和基氏

 ビジネスの現状は「国内はブレーカを搭載した分電盤が中心。海外ではブレーカ単品のビジネスで、いずれもB2Bビジネスが主軸」(パナソニックスイッチギアシステムズ 代表取締役社長の矢尾和基氏)となる。これまで「適正価格、高品質、短納期」という市場の要求に対応して、長年培ってきた技術をベースに「省施工」「省スペース」「省エネ」という特徴を持った製品を提供し続けてきた。業績も「この10年でシェアも10ポイント高めることができた」(矢尾氏)とし、現在国内では5割のシェアを誇るなど順調に拡大している。

 同社によると、国内の新規住宅着工件数は2019年度の88万戸から、2030年には66万戸に減少する見込みだ。ただ、リフォーム分野は年間5.6兆円規模を当面維持するとみられる。非住宅分野でもリニューアル関連市場は堅調に推移するとの予想だ。一方、海外市場については、同社がすでに展開しているインド、トルコ、ASEAN諸国などのアジア地域では、新型コロナウイルスの影響により不透明感があるものの大きく伸長すると期待される。

 こうした市場環境の中で、今後、同社では分電盤の家庭内における全ての電化機器につながっているという立地と技術を生かし「くらしアップデート」「IoT住宅」のプラットフォーマとして快適な住空間の創出に貢献する取り組みを行う。国内では住宅盤事業のダントツナンバーワンの事業規模と電設盤・デバイス事業の高付加価値商品創出により高い収益力を安定して実現する。海外では、まだまだ認知度が低いブレーカ、分電盤事業のプレゼンス向上を目指し、新事業・新市場・新エリアを基軸に大幅伸長を目指す。

 2019年度は国内比率が75%だったものを、商品レンジの拡充、現在主要のインド、中国、ベトナム、トルコの重点4カ国でのシェア拡大と共に「2020年は新型コロナウイルスの影響を受ける可能性があるものの、同じBUの配線カテゴリーが展開しているフィリピン、インドネシアでの市場展開を計画している」(矢尾氏)など、新規市場を開拓。2030年には海外比率を6割にまで引き上げるなど、販売額(仮想連結)を2019年度比1.8倍に引き上げる計画である。

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