――Spiralの船出は順調でしたか。
石川氏 ドライヤードローンで髪を乾かす際に両肩に置く信号として、QRコードを使うというアイデアはすぐに思い付きました。「3m右に進め」「5m上昇しろ」といったドローンへの指示をQRコードとして出力し、そのQRコードをドローンに取り付けたカメラで適切に受け取れるシステムを構築すれば済むからです。
その時「これを応用し、ドローンへの指示をQRコード化するシステムを開発すれば、現場の人たちが簡単に指示を出せる屋内運用に対応する自律飛行型のドローンが実現できるのではないか」と考えつきまして、そこから簡単なプロトタイプの開発を始めました。
なかなか順調にいかなくなったのはここからです。当時、私たちは「QRコードの紙を貼るだけで、屋内でドローンを自在に制御できるシステムを開発しています」と営業しました。ただ、営業先は「いいねー」とは言ってくれるのですが、どう使いたいという具体案が出てこない。一方で、私自身もどう使ったらいいかという具体的な提案ができなかった。具体的な案件もないので、開発もどこか中ぶらりんな状態が続きました。
そこで「作るものが曖昧なまま開発を進めるべきではない」と思い切って開発をストップして、代わりに一念発起し、海外で営業をかけることを決めました。1年間で18カ国を回った結果、海外でも確かなニーズがあることは分かり、少しずつどんなプロダクトを作るべきかも見えてきました。一方で「1つでも2つでも、まずは成功事例を作らないと」ということにも気付きました。
そこで帰国後、DMM.make AKIBAを通じてフランスのテクノロジーイベント「Viva Technology」に出展した他、日本の展示会にもSpiralの制御モジュールと自律飛行の仕組み(MarkFlex Air)を出品しました。そこで、あるゼネコンの社員から「ダメ出し」をされました。ただ、このゼネコン社員の方は、私たちの技術を高く評価してくれていて、数週間もたたないうちに、MarkFlex Airを使った建設現場の自動巡回システムについてのLOI(レターオブインテント、意向表明書)を交わしました。これもラッキーな出会いでした。
――どんな「ダメ出し」を受けたのですか。
石川氏 「ドローンの充電ステーションがないと困る」ということです。建設現場と事務所は離れていることが多く、作業員がいちいち充電しに行かないといけないならドローンを使う必要がないと。これについては今、シンガポールの会社と研究開発をしている最中です。
もう1つの難題は、ドローンへの指示を出す「QRコードを印刷した紙」は建設現場では使えないということです。確かに、現場では紙がすぐに汚れてドローンが読み取れなくなる可能性があります。これも、QRコードに代わってレーザーマーカーを使う方法などでクリアできないかと研究しています。
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