オンライン診療と同様に、日本のCOVID-19対応支援技術として注目を集めているものに、モバイル技術を駆使した「コンタクトトレーシング(接触追跡)」がある。
日本国内では2020年4月6日、民間企業や技術者の協力を得ながら、諸外国の状況も踏まえ、考えられるITやデータの活用を検討し、テック企業による新たな提案も受けながら迅速に開発・実装できることを目的として、内閣官房に「新型コロナウイルス感染症対策 テックチーム(ACTT)」(関連情報)が設置され、コンタクトトレーシングアプリケーションの開発・導入に関する議論が始まった。
図2は、新型コロナウイルス感染症対策テックチーム事務局が公開した2020年5月8日付「接触確認アプリの導入に向けた 取組について(案)」より、接触確認アプリの目的についてまとめたものである。
この中で、コンタクトトレーシングアプリケーションの役割について、以下のように説明している。
スマートフォンを活用して、①自らの行動変容を確認できる、②自分が感染者と分かったときに、プライバシー保護と本人同意を前提に、濃厚接触者に通知し、濃厚接触者自ら国の新型コロナウイルス感染者等把握・管理支援システム(仮称)に登録できるようにすることで、健康観察への円滑な移行なども期待できる。
他方、同月1日に個人情報保護委員会が公表した「新型コロナウイルス感染症対策としてコンタクトトレーシングアプリを活用するための個人情報保護委員会の考え方について」(関連情報、PDF)では、以下のように説明している。
コンタクトトレーシングアプリの機能やシステムの構造は、各国・地域によって異なるが、おおむね、携帯端末のBluetoothなどの技術を用いて、アプリ利用者同士の一定水準以上の接触(いわゆる「濃厚接触」)の履歴を作成・保存し、これを手掛かりに、アプリ利用者に感染者が出た場合に速やかに当該利用者の濃厚接触者に警告を出すというものである。
日本の場合、個人情報保護重視の観点から、位置情報型よりもBluetooth型、中央サーバ処理型よりも端末処理型のコンタクトトレーシング技術を指向する傾向が見受けられる。
なお、Bluetooth型/端末処理型のCOVID-19コンタクトトレーシング技術に関連して、2020年4月10日、米国のアップルとグーグルが連携することを発表している(関連情報)。Bluetoothを採用した消費者向けデバイスが関わるとなれば、本連載第48回で触れた米国立標準技術研究所(NIST)の「NIST IR 8228:インターネット・オブ・シングス(IoT)のサイバーセキュリティとプライバシーリスクを管理する際の考慮事項」(関連情報)や、連載第54回で触れた「カリフォルニア州IoT機器セキュリティ法」(関連情報などの要件が影響を及ぼす可能性があるので、今後のIoTセキュリティ対応動向が注目される。
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