NTTドコモが2020年年3月25日から次世代移動通信方式である5Gを用いた通信サービスを提供開始する。これまでの新たな移動通信方式のサービス開始の発表と大きく異なるのは、一般ユーザー向けにとどまらず、製造業をはじめとする企業利用を前提としたB2B向けソリューションも同時に発表している点だ。
NTTドコモは2020年3月18日、同年3月25日から次世代移動通信方式である5Gを用いた通信サービスを提供開始すると発表した。これまでの新たな移動通信方式のサービス開始の発表と大きく異なるのは、一般ユーザー向けにとどまらず、製造業をはじめとする企業利用を前提としたB2B向けソリューションも同時に発表している点だ。
同社の5Gサービスは、通信速度がサービス開始時点で受信時最大3.4Gbps/送信時最大182Mbps、2020年6月以降に同4.1Gbps/480Mbpsに向上する。対応エリアも2020年3月末時点の全国150カ所から、同年6月末には全都道府県へ展開し、2021年3月末に全政令指定都市を含めた500都市以上に広げるとしている。料金プランも、現行のLTE向けプランに準じて設定されている。
今回の発表では、これら一般ユーザー向けのサービスに加えて、「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」でパートナー企業と実証実験を積み重ねてきたさまざまなソリューションの提供を開始する方針も表明した。NTTドコモが2018年2月に立ち上げた同プログラムでは、300以上の5G活用モデルの実証に取り組んできた。パートナー数は現在3300社以上で、今後も2021年度末に5000社を目標として活動を拡大していく計画である。
5Gサービス開始に併せて発表したのは「まずは産業の高度化、街づくり、働き方改革などの社会課題の解決につながるものが中心」(ニュースリリースより抜粋)で、22のソリューションがラインアップされている。これらのうち6つについては、パートナー企業とNTTドコモの商材を組み合わせて、申し込みから請求までNTTドコモがワンストップで提供する。
NTTドコモがワンストップ提供する6つのソリューションの内、NTTドコモ単独で開発した高精細映像伝送ソリューション「Live EX 8KVR」以外の5つは、製造業がユーザーになり得るものだ(表1)。
ソリューション名称 | 概要 | パートナー企業 | 提供開始日 | |
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製造機器一括分析ソリューション「FAAP」 | 工場内の機器から得られる現場データをクラウド上でリアルタイムに収集・AI分析・フィードバックし、故障予知や画像検品自動化による生産性改善を実現 | ブレインズテクノロジー/シナプスイノベーション | 2020年5月下旬以降 | |
遠隔作業支援ソリューション「AceReal for docomo」 | ARスマートグラス、業務支援アプリケーション、サポートサービス、「クラウドダイレクト」をワンストップで提供し遠隔からの作業支援を実施 | サン電子 | 2020年5月下旬以降 | |
遠隔共同制作ソリューション「Virtual Design Atelier」 | ヘッドマウントディスプレイとコントローラを用いて、3Dデザインの共有や共同制作を遠隔拠点間で実現 | ワコム | 2020年5月下旬以降 | |
顔認証入退管理ソリューション「EasyPass powered by SAFR」 | ドコモオープンイノベーションクラウド×AIによる高速/高精度な顔認証技術を活用したスムーズなゲート入退管理の実現を支援 | ネットワンシステムズ/RealNetworks | 2020年5月下旬以降 | |
点群データ活用ソリューション「Field Simulator」 | 現場をスキャンして取得した大容量の点群データを高速に転送し3Dモデル化、また、設備の配置・搬入出ルートの検討・計画モデルと工事結果の比較など多様なシミュレーションを実現 | エリジオン | 2020年5月下旬以降 | |
高精細映像伝送ソリューション「Live EX 8KVR」 | 撮影から配信までワンストップでドコモがご用意し、ユーザーによる8KVRのライブ配信をサポート | −(NTTドコモ単独開発) | 2020年3月25日 | |
表1 パートナーの商材との組み合わせてでNTTドコモがワンストップで提供するソリューション |
例えば、製造機器一括分析ソリューションの「FAAP」は、工場スマート化の大きな要素である故障予知や画像検査の自動化の機能が盛り込まれたソリューションになっている。また、遠隔共同制作ソリューション「Virtual Design Atelier」は、製造業のVR(仮想現実)システム活用の代表例として挙げられる遠隔地/多拠点間での製品設計レビューに最適だ。点群データ活用ソリューション「Field Simulator」も、デジタルツインを利用した工場内での生産最適化に活用できる可能性が高い。
パートナーと提供合意できている残りの16ソリューション(表2)でも、日鉄ソリューションズの「安全見守りくん」やEDGMATRIXの「IVA EDGE AI SERVICE PLATFORM」など、製造業を主要な顧客と見込むものがある。
ソリューション名称 | 概要 | パートナー企業 | 提供開始日 | |
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短遅延映像配信クラウドサービス「Zao Cloud View」 | 安定した高品質の映像をリアルタイムに配信し、会話ができるサービスをクラウド上で提供 | ソリトンシステムズ | 2020年3月25日 | |
超短遅延ライブ中継機「Smart-telecaster Zao-SH」 | Glass to Glassの遅延時間が35msのライブ中継ソリューション | ソリトンシステムズ | 2020年5月下旬以降 | |
「SMART FullHD」 | 遠隔医療や学会中継、社長講話、各種研修など大型スクリーンを使用する大規模イベントで、5Gを活用しフルハイビジョン映像で多拠点・双方向コミュニケーションを実現 | エヌ・ティ・ティ・ビズリンク | 2020年3月25日 | |
「SMART MultiViewing」 | パブリックビューイングやダンスレッスンなど多拠点を結んだ新たなエンターテインメントやイベントで、5Gを用いて大迫力の360度カメラ映像をマルチスクリーンに投影し、双方向ならではの臨場感を演出 | エヌ・ティ・ティ・ビズリンク | 2020年3月25日 | |
「LiveU」 | テレビ番組のライブやスポーツなどの中継や取材に最適な小型軽量の4K対応モバイル中継ソリューションを提供 | LiveU | 2020年3月25日 | |
「ストリームウェイズ」 | 誰でもかんたんに安定した2K/4K映像伝送および映像の切り替えや分配ができるサービス(映像伝送パッケージのレンタルサービスも提供) | NTTテクノクロス | 2020年3月25日 | |
「8K ROI カメラシステム」 | 8K映像から4つのHD映像を切り出しオペレーションを効率・省力化できるカメラシステムを提供 | パナソニック システムソリューションズ ジャパン | 2020年下期以降 | |
「4Kライブ映像伝送ソリューション」 | 移動や人口密集などで生じる無線帯域の変動でも独自の帯域推定技術によりスムーズな映像伝送を実現 | パナソニック システムソリューションズ ジャパン | 2020年7月以降 | |
「スマート街路灯」 | 照明のLED化に加え、カメラ、サイネージによる安心安全で活気ある街づくりに貢献 | NEC | 2020年5月下旬以降 | |
「安全見守りくん」 | 現場で働く作業員の状態をリアルタイムで取得し、遠隔での見守りを実現するICTソリューション | 日鉄ソリューションズ | 2020年3月25日 | |
「ARを用いた遠隔コミュニケーションシステム」 | ARを用いて再現した高精細CG映像を教材として使用し、遠隔から複数人との対話型コミュニケーションを実現。遠隔からの授業や観光紹介といった新しい体験を提供 | 凸版印刷 | 2020年5月下旬以降 | |
「PicoCELA マルチホップWi-Fi」 | 高速大容量の5G回線とマルチホップWi-Fiを組み合わせることにより、高速なWi-Fi環境を提供 | 協和エクシオ | 2020年3月25日 | |
「newme」 | 自宅からnewmeを遠隔操作して百貨店でショッピングをしたり、遠方のミュージアム内を歩いたり、離れた場所に住んでいる家族と対話をしたりなど、遠隔でさまざまな体験ができるソリューション | ANAホールディングス | 2020年5月上旬以降 | |
「IVA EDGE AI SERVICE PLATFORM」 | 防犯、製造、マーケティングなど、さまざまな課題に対して最適なAIをマーケットプレースからエッジAIデバイスへ自由に展開が可能なプラットフォームサービス | EDGEMATRIX | 2020年5月上旬以降 | |
「Fairyview」 | 監視作業などにおいて複数のカメラ映像を個別に確認することなく、合成された一つの映像で全体を俯瞰できるソリューション | 三菱電機 | 2020年7月以降 | |
「Free View Point Tube」 | 画期的な次世代自由視点映像配信ソリューション | クレッセント | 2020年5月下旬以降 | |
表2 パートナーと提供合意ができているソリューション。動作検証を実施した後に提供される予定 |
また、ドコモ5Gオープンパートナープログラムの活動をさらに拡大するために、NTTドコモ・ベンチャーズと共同で「docomo 5G DX AWARDS 2020」の開催も決めた(募集サイト)。
同アワードでは、5Gと親和性のあるさまざまな企業の特徴的なアセット(技術、プロダクト、サービス)を募集し、5G商用サービスの活用意義を表彰する。応募期間は2020年3月18日〜5月31日で、書類による1次選考の後、7月上旬開催予定のファイナリストプレゼンテーションで最終選考を行って、最優秀アセット、優秀アセット、準優秀アセット2件を入賞として選定する。これら入賞アセットは、最優秀アセットで100万円となる賞金の他、ドコモとのサービス化検討や共同プロモーションの実施が特典となっている。
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