機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第11回はデータムを必要とする幾何公差をテーマに、姿勢公差の輪郭度について取り上げる。
「データム(Datum)」を必要とする姿勢公差の5つの幾何公差のうち、今回は「輪郭度」について取り上げます。
輪郭度の定義を「JIS B 0621:1984 幾何偏差の定義及び表示」(以下、JIS)で確認してみると、輪郭度には「線の輪郭度」と「面の輪郭度」があることが分かります。ちなみに、“データムに関連しない線の輪郭度”については、以前解説した通りです。
線の輪郭度は、曲面を構成する線要素(輪郭線)のバラつきを2次元の平面的な公差域で規制します。例えば、「意匠面(デザイン)などの曲面が、設計者の意図した通りにできているか」を指示する際に使用されます。指定の曲面を切断した断面の線が、公差域に含まれている必要があります。
線の輪郭度は、理論的に正確な寸法によって定められた幾何学的輪郭線(Kr)上に中心を持つ同一の直径の幾何学的円の2つの包絡線で、その線の輪郭(K)を挟んだときの、2包絡線の間隔(f)(円の直径)で表し、線の輪郭度_mmまたは線の輪郭度_μmと表示する。ただし、理論的に正確な寸法は、データム線またはデータム面に関して与える場合と、それらと関係しないで与える場合とがある。
※包絡線:ここでは、輪郭線の全てに対して接する曲線のことをいう。
以下に、線の輪郭度の使用例を示します(図2)。
データム平面Aに垂直な任意断面(測定断面)において、実測した輪郭線は、直径0.1mmの円の2つの包絡線で規制される公差域になければならないことと、公差域はサイズ公差の範囲内(59.8〜60.2mm)で、上下方向に移動できることを示しています。その包絡線を作る円の中心は、理論的に正確なR125mmの曲率半径を持ち、かつデータム平面Aに関して理論的に正確な輪郭を成す線上にあります。つまり、実測した輪郭線には、幾何形状の規制とデータム平面Aに対する姿勢の規制が課せられています。
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