ただし、組み合わせ最適化問題で量子コンピュータが必要になるのはリアルタイム性が要求される用途だ。そこまでリアルタイム性が必要なく、より規模の大きな問題に適用するのであれば、従来のシリコン半導体技術を用いたアニーリングマシンでも対応が可能だ。
NECが提供するSX-Aurora TSUBASAを用いたSAマシンは、インテルのXeonプロセッサを用いる場合と比べて300倍以上高速の処理が可能で、SX-Aurora TSUBASA1台当たり10万量子ビット相当の組み合わせ最適化問題に対応できるという。西原氏は「SX-Aurora TSUBASAはスーパーコンピュータなので、従来通りにシミュレーションや機械学習などのアプリケーションにも利用できる。将来の高速コンピューティングプラットフォームは、最適なコンピューティング技術で適切に課題を解くことが重要であり、そういった連携アプリケーションを開発するのも容易だろう」と説明する。
会見では、NECで生産を担うNECプラットフォームズの工場で実施した、表面実装ラインの生産計画立案への適用例が紹介された。
表面実装ラインでは生産品種が変わるごとに、搭載する部品などを変更するための段取り替えを行う必要がある。近年では、NECの工場でも多品種変量生産が求められており、そのためには段取り替えを頻繁に行わなければならない。従来は、この段取り替えの計画は熟練技術者が数時間をかけて立案していた。
段取り替えの計画立案は、まさに量子コンピューティング技術が得意とする組み合わせ最適化問題である。NECは、これまでの段取り替えデータを基に、5000〜1万量子ビットのSAマシンを用いて段取り替えの計画立案を実施した。その結果、計画立案時間は数秒に短縮でき、その計画内容についても段取り替えによる生産ラインの停止時間を最大30%削減できたという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.