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» 2019年12月11日 06時00分 公開

ダイソンEV撤退をケーススタディーとして考える和田憲一郎の電動化新時代!(35)(3/4 ページ)

[和田憲一郎(日本電動化研究所 代表取締役),MONOist]

(3)モビリティの将来性に関する場違い感

 2016年にEV開発に動き出した時、ダイソン氏は、革新的な要素技術を搭載して、素晴らしいデザインで構成すれば事業として勝算はあると考えていたと思われる。そのために、どの自動車メーカーも実用化したことのない全固体電池に関して、米国ミシガン州のベンチャー企業「Sakti3」を9000万ドルで買収するとともに、2016年には14億ドルを投資して、全固体電池の工場建設計画を発表している。

 しかし、開発を進めている内に、自動車メーカーは自動運転開発に注力し始め、またテスラは無線ネットワークによるソフトウェアアップデート(OTA:Over-The-Air)が常装されるなど、コネクテッド要素が強くなってきた。この傾向はますます強まり、EVはまるでタイヤが4つ装着されたスマートフォンもしくはコンピュータと呼ばれるようになってきている。

 この動きはダイソン氏にとっては、予想以上に早かったのではないだろうか。ダイソンはこれまでサイクロン掃除機など家電製品をスタンドアロンなものとして開発し、販売してきた。モノづくり精神が宿り、1つ1つ作り上げていく商品と、コネクテッド機能やそれに連動する部品がクルマの良しあしを決める将来の方向性に対し、どうしても違和感、いや場違い感があったのではないだろうか。テスラのイーロン・マスク氏はもともとIT出身であり、逆に彼らのフィールドであると考えていたであろう。そのため、オートパイロット機能も搭載して、各自動車メーカーと比較して大胆な戦略で進めている。

 今後、IT技術者を数多く採用してキャッチアップすることは不可能ではないが、社長で実質のプロジェクトマネジャーであるダイソン氏は、自分が得意とするフィールドから離れていくことに、限界を感じたように思えてしまう。

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