さまざまな事業を手掛ける日立グループで運用されたSCOサービスだが、それでも各ユーザーのSCM業務の内容は異なるため、そのまま適用するとはできない。どうしてもそれぞれのユーザーに合わせたカスタマイズが必要になる。
日立製作所 産業・流通ビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 モビリティ&マニュファクチャリング本部 TSCMソリューションセンタ 副センタ長の森田浩隆氏は「日立のノウハウを反映したSCM業務上の意思決定ロジックのベストプラクティスを基にしたモデルパターンを活用して、各ユーザーに合わせるためのモデル構築の工数を削減した。このモデルパターンは企業6種、業務22種、ロジック61種ある。さらに、各ユーザー特有のアルゴリズムも柔軟かつ迅速に組み込めるシステム構成とした。ユースケースも多数積み上がっている」と強調する。
実際に日立社内での採用事例では、モデル構築の期間を数カ月から数週間に短縮することができたという。「工場や組織、企業、プロセスの壁を越えて全体を見られることが特徴だが、PoC(概念実証)として使用するデータを絞り込んでのスモールスタートも可能だし、その後スケーラブルに適用範囲を拡大できる。データを収集して見える化まで進めていても、それを活用するための姿を描けていないことが多い。SCOサービスはその解決手段になる」(森田氏)という。
なお、SCOサービスの商用化と並行して、2017年度にあるグローバルに展開する大手小売企業で導入検証を行ったところ、従来はタイムリーに出荷するため国内倉庫に余剰保管していた在庫を、保管コストの安価な海外倉庫に移動させても問題のない計画を立案できた。その計画の在庫管理コストは従来比で約50%削減できる内容だった。さらに、数万点もの商品別にきめ細かな供給計画を迅速に自動計算できるようになったため、欠品発生件数を約50%削減できる効果も確認した。この成果により、2019年度からは本番環境での運用を開始している。
この大手小売企業という先行ユーザーの運用開始を受け、本格的な外販活動が始まっている。既に、SCOサービスの評価段階に入っているユーザーが5社ほどあり、これらを起点にさらにユーザー数を拡大しつつ、PoC、本格導入といった段階に進めたい考えだ。また、SCOサービスの高度化として、蓄積データを活用した分析/改善サービスの開発も進めているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.