推論性能が2.5倍になったIce Lake、モバイル向けCoreプロセッサの今組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

インテルは2019年10月2日、東京都内で記者向けに第10世代Coreプロセッサに関する技術説明会を開催した。体験会で紹介された内容を基に、本稿ではIce LakeとComet Lakeの概要をおさらいしたい。

» 2019年10月04日 06時30分 公開
[松本貴志MONOist]

 第10世代Intel Coreプロセッサを搭載するモバイルPCが登場し始めた。同プロセッサは10nmプロセスの「Ice Lake」と、14nm++プロセスの「Comet Lake」の2つのファミリーが並列する形となっており、その製品ラインアップは多岐にわたる。

 インテルは2019年10月2日、東京都内で記者向けに第10世代Coreプロセッサに関する技術説明会を開催した。体験会で紹介された内容を基に、本稿ではIce LakeとComet Lakeの概要をおさらいしたい。

東京都内で開催された記者向け説明会「インテル テクノロジー・ショーケース」

 現時点で発表済みの第10世代Intel Coreプロセッサは、全てモバイル向けの製品となる。SKU(Stock Keeping Unit)を整理すると、Ice LakeはCore i7-1068G7を筆頭にUシリーズ(ノーマルTDPが28W、もしくは15W)が6製品、Yシリーズ(同9W)が5製品となる。また、Comet LakeはCore i7-10710Uを筆頭にUシリーズ(同15W)が4製品、Yシリーズ(同7W)が4製品。

第10世代Intel Coreプロセッサ(Ice Lake)の製品ラインアップ(クリックで拡大) 出典:インテル
第10世代Intel Coreプロセッサ(Comet Lake)の製品ラインアップ(クリックで拡大) 出典:インテル

 Ice LakeとComet Lakeは得意とするアプリケーションが異なる。10nmプロセスのIce Lakeは、強化されたグラフィックスとAI(人工知能)処理性能を生かして、ゲームを含めたマルチメディアや制作用途に向く。また、14nm++プロセスのComet Lakeは、同社モバイル向けプロセッサで初となる最大6コア12スレッドのSKUを擁していることに加え、Ice Lakeと比較して最大ターボ周波数が高めに設定されており、オフィスアプリケーションなどでの生産性向上を主眼としている。

 また、Ice LakeとComet Lakeで共通した機能強化ポイントとして、Wi-Fi 6とThunderbolt 3への対応による通信の高速化、AIによるプロセッサ性能のダイナミックチューニングなどがある。

Ice Lakeの推論性能は2.5倍に高速化、Comet Lakeは最大6コアに

 Ice Lakeは「今までのノートブックPCの使い方を躍進させる」(インテル 技術本部 部長 安生健一朗氏)プロセッサとしての役割を担う。同ファミリーでは、グラフィックス性能を大幅に向上させた第11世代GPUの「Iris Plus」を統合したことが最大の特徴。Iris Plusは最大で64EU(実行ユニット)を持ち、1TFLOPSを超える演算性能をモバイルPCで実現したという。

Ice Lakeの概要(クリックで拡大) 出典:インテル

 CPUの面ではSunny Coveマイクロアーキテクチャを新たに採用し、IPC(Instructions Per Cycle)を改善させた。また、対応するメインメモリも高速化し、LPDDR4x-3733とDDR4-3200をサポートする。

 AI性能の強化では、推論を高速化する「Intel Deep Learning Boost」をモバイル向けプロセッサとして初めて実装した。同技術は第2世代のXeon Scalable Processorで既に採用されており、AVX512_VNNI(Vector Neural Network Instruction)命令セットによりINT8(8ビット整数)やINT16の演算を高速に処理する。また、AIによる音声処理を低消費電力で実行できる「Intel Gaussian & Neural Accelerator(GNA)」を、Ice Lakeでは初めてハードウェア的に組み込んだ。

 I/Oでは、最大40Gbpsの転送速度を提供するThunderbolt 3を4ポート内蔵した。プロセッサと同一パッケージ内のPCH(Platform Control Hub)を通じて、Wi-Fi 6による高速な無線通信機能も提供する。

 第8世代Coreプロセッサと比較して、AI性能(INT8によるResNet-50モデル推論)で約2.5倍、HEVCエンコーディングで約2倍の性能改善を果たした。ゲーム性能でも1.8倍程度のフレームレート高速化を実現しており、画質を追い求めない設定であれば1080pの解像度で3Dゲームが楽しめるという。また、ゲームや動画再生時における画面のカクツキなどを解消する「Adaptive-Sync」を実装したことや、BT.2020の色域対応によって4K HDR動画を数十億色で再生できる。

Ice Lakeの進化点(クリックで拡大) 出典:インテル

 Comet Lakeは「薄型ノートブックPCでも最大のCPUパフォーマンスを提供する」(安生氏)ことを主眼に置いたプロセッサだ。ファミリーの最上位SKUであるCore i7-10710Uでは、同社製モバイル向けCPUで初6コア12スレッドのプロセッサとなる。最大ターボ周波数は4.90GHz(Core i7-10510U)で、メインメモリはLPDDR4x-2933、LPDDR3-2133、DDR4-2666に対応する。

 Intel GNAは搭載していないが、Amazonの音声アシスタントであるAlexaに対応するという。また、Thunderbolt 3とWi-Fi 6はPCHを通じて接続され、「第10世代Coreプロセッサと呼ぶにふさわしい機能を備えた」(安生氏)とする。

左:Comet Lakeの概要 右:Ice LakeとComet Lakeの比較(クリックで拡大) 出典:インテル
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