「一家に一台、マッスルスーツ」、イノフィスが10万円台のパワードスーツを発売ロボット開発ニュース

イノフィスは2019年9月24日、パワードスーツの新製品「マッスルスーツ Every」を同年11月1日から発売すると発表した。

» 2019年09月25日 08時30分 公開
[松本貴志MONOist]

 イノフィスは2019年9月24日、パワードスーツの新製品「マッスルスーツ Every」を同年11月1日に発売すると発表した。駆動に電力を用いず、25.5kgfの最大補助力を発揮する。従来市場である法人利用に加えて、新たに家庭への普及を狙うため、リコーグループとの協業によって13万6000円(税別、発売特別記念価格)と「圧倒的な低価格」(イノフィス)を実現したことが特徴だ。

右がマッスルスーツ Every。左は従来モデルの「マッスルスーツEdge」(クリックで拡大)
東京理科大学の小林宏氏

 イノフィスは東京理科大学発のベンチャー企業で、同大学工学部機械工学科教授の小林宏氏が2013年に創業した。空気を駆動源とするMcKibben型人工筋肉を活用し、小林氏はパワードスーツ「マッスルスーツ」を2014年から開発している。2019年4月には累計販売台数が4000台を超えた。小林氏はマッスルスーツ開発にあたり「自由に動けない人を動けるようにしたい」との理念を掲げる。最大の顧客層は介護業で、製造業での採用も多い。また、物流や農業の法人からも引き合いを得ているという。

 一方で、これまでのマッスルスーツは最廉価モデル「マッスルスーツ Edge」でも価格が49万8000円(税別)と、個人が購入するにはハードルが高いものだった。イノフィス 社長の古川尚史氏は「老々介護など在宅介護を行っている家庭からも問い合わせを多くいただいていたが、価格を伝えると購入を諦める人がほとんどだった」と明かす。そこで、マッスルスーツ Everyでは「従来製品からフルモデルチェンジを行い、低価格を実現した。また、リコーと共同で企画段階から量産に向けた設計を行った」ことで、従来製品ではカバーしきれなかった個人の顧客にも訴求が可能な製品とした。

マッスルスーツの製品ラインアップ(クリックで拡大) 出典:イノフィス

 低価格化では、部品数170点で構成していた従来モデルから、マッスルスーツ Everyでは約3割の点数削減を果たしたことが大きく寄与した。さらに、リコー複合機にも用いられている汎用部品の採用や、樹脂によるフレームの一体成型化を行った。本体重量は3.8kgで、マッスルスーツの製品ラインアップの中で最軽量モデルとなる。高齢者や女性にも扱いやすい製品とした。IP56の防じん、耐水性能を確保し、100万回の使用にも耐える耐久性を有しており、雪かきや農作業での利用も可能だ。

マッスルスーツ Everyを着用して重量物を持ち上げる様子(クリックで拡大)

 量産対応については、リコーテクノロジーズが量産設計、リコーエレメックスが生産受託を担い、複写機の設計と生産ノウハウをつぎ込んだという。生産はリコーエレメックスの恵那事業所(岐阜県恵那市)で行う。リコーテクノロジーズで第二設計本部 本部長を務める江間裕通氏は「リコーのコストダウン能力と環境技術対応を詰め込んで量産設計を行った。小林先生から高い精度を求められたのが印象に残っており、担当者は相当苦労していた」とイノフィスとの協業を振り返った。

 初年度の販売目標は1万台。次期モデルの開発も開始しており、さらなる低価格化と本体重量3kg程度を目指した軽量化を進める。今後、海外展開や業種特化型モデルの開発も検討するという。

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