3Dプリンタやレーザーカッターなどの機能を、既存の製造手法の中に組み込む実験を進めています。その事例の1つが、TechFactoryの記事「未知なるジェネレーティブデザインを前に砂型鋳造の限界に挑んだ町工場のプロ魂」で紹介されています。
間もなく創業50年を迎える町工場の鋳造技術と3Dプリント技術との融合をテーマに実験を繰り返し、その活用方法を探ってきました。既存の製造業からは畑違い(あるいは競合)と思われがちな3Dプリント技術ですが、その特徴が製造業者の技術と結び付くと、思いもよらない成果が得られることがあります。実際、この工場では3Dプリント技術を取り入れることに成功し、新たな製法が確立され、「鋳物試作」という新事業をスタートさせています。
この一連の製法実験を、ファブラボ神田錦町のファブマスターが技術サポートしています。また、製法開発を進める中で、ジェネレーティブデザインという新しい設計手法の実践もしています。次世代の設計手法といわれるこの技術トレンドを、ファブマスターが翻訳者となり、製造業の方々とともに実装を考えています。
ジェネレーティブデザインが取り入れられた事例は、続々と生み出されています。3Dプリンタなどの付加製法技術(Additive Manufacturing)の発展により、こうした形状が当たり前になる未来がそこまで来ています。
デジタルファブリケーションツールの特徴である、データ改変の容易さ、加工の手軽さ、素早い加工性を生かした“多品種少量生産の仕組みづくり”にも取り組んでいます。
連載第2回で紹介した「デジタル加工工房LOFT&Fab」。ここでは、ロフトの店頭に並ぶ商品をお客さま自身がカスタマイズできる、というコンセプトで工房が運用されています。商品を一つ一つ“カスタマイズ”することで、大量生産の商品を「世界に1つだけの商品」へと昇華しています。
お客さまに対しては、カスタマイズを通じた「デジタルファブリケーション体験」を提供しつつ、「このお店で買う価値」づくりを店舗(ロフト)側とともに取り組んでいる事例となります。デジタルファブリケーションツールを、従来の小売店舗の形態に掛け合わせることで、次世代型小売店のスタイルを提案しています。
店頭には「ファブリケーションプランナー」という専門スタッフが常駐していることも、新しい試みです。お客さまのカスタマイズデータ作成と加工を柔軟にサポートします。また、カスタマイズの理想を聞き出しながら、最適なプランをご提案しています。「加工したくても必要なデータが作れない」といった苦手部分をサポートしながら、より気軽にカスタマイズできる体制を整えています。
青年海外協力隊がファブラボをベースに活動する――。そんな取り組みがJICA(国際協力機構)でスタートしています。2019年9月に募集していたのは、「ファブラボブータン」を活動拠点にする取り組みです。2年間にわたる派遣期間において、現地のファブラボで製作を進めながら、防災や減災に役立つツールの試作を支援することが期待されています。
アイデアを迅速にカタチにしながら、試行錯誤をテンポよく進めていくために、ファブラボが活用されています。また、世界のファブラボともネットワークでつながるため、他のファブラボと協業しながらの試作開発も行えます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.