有力なLPWAの方式と見られているLoRaWANだが、普及に向けては多くの課題がある。齊藤氏は「相互接続が可能なLoRaWANよりも、通信方式としてLoRaだけを用いていて相互接続ができない“プライベートLoRa”の方が多く導入されているのが現状だろう。これは920MHz帯域が混雑する一因にもなっている。また、LoRaWANのメリットは、規格に準拠したデバイスであればベンダーを問わず接続できることだが、プライベートLoRaが普及しても相互接続できないデバイスが増えるばかりで、LoRaWAN準拠デバイスのコスト削減にはつながらない」と指摘する。
また、LoRaWANの普及が進まない理由としては、「NB-IoTやSigfoxの対抗馬として月額料金の通信サービスを提供可能」「山の上に基地局を設置すれば100km離れていても通信可能、基地局1台で大量の子機を収容できる」といった過剰な期待に対して、それらの実現が難しいという問題があった。齊藤氏は「LoRaWANはまず大量のデータ送受信には向いていない。そして100km、10kmといった通信距離は現実的ではなく、最も得意とするのは1kmくらい。例えば、1つのビル内、1つの店舗内に設置するIoTセンサーとつなげるのに最適だ。この強みを生かした展開が必要だと考えている。イメージとしては、通信速度は遅いがよく飛ぶ無線LAN、“ビッグWi-Fi”と捉えるべきだ」と述べ、LoRaWANを再定義した上で事業展開を進める方針を示した。
今後の事業展開では、実証実験を進めている農業の他、2020年6月から義務化されるHACCP対応に向けた小売店舗や冷凍冷蔵車などのサプライチェーン、スマートビルディングなどをユースケースとして想定している。オンプレミスでの運用の需要が強いスマート工場も、ネットワークサーバ機能をビルトインしたゲートウェイの引き合いが強いと想定している。「アナログメーターの数値を読み取って送信するIoTセンサーなどもそろえている」(Kiwitec日本法人 社長のピーター・リン氏)という。
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