ボッシュのVirtual Trackingは、せんじ詰めれば、トヨタが生み出したJIT(ジャストインタイム)の生産方式をデジタル技術の活用により成し遂げようとするものです。MindSphereやInfor Nexusは、JITや生産革新を成し遂げるためのデジタルツールと捉えることも可能でしょう。その側面だけを見ると、新たな価値の創出とはいえないわけですが、IoT(モノのインターネット)の進化により、現場での努力を必要とせずに世界有数の企業と同等の効率的なサプライチェーンを組み上げられるようになったわけです。
現場力を強みにJITや生産革新を実現した日系企業からすれば、その差を一足飛びに埋めるような技術が普及しつつあるといえます。日系企業は、この潜在的脅威を見据えた新たな競争戦略を構築すべき状況にあるといえるでしょう。
さて、次回は、流通・小売プロセスに目を向けてみたいと思います。消費者の需要動向や購買行動を予測、推定し、サプライチェーンの最適化を図ろうとする先進事例を紹介します。
小野塚 征志(おのづか まさし) 株式会社ローランド・ベルガー パートナー
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革等を始めとする多様なコンサルティングサービスを展開。2019年3月、日本経済新聞出版社より『ロジスティクス4.0−物流の創造的革新』を上梓。
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