特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

LIXILの研究開発戦略は2×4ならぬ「3×4」!? 新規事業化にも踏み込む研究開発の最前線(1/2 ページ)

LIXILは、研究開発を担うテクノロジー部門の取り組みや、“未来の生活価値”の実現に向けた研究開発戦略「3×4」などについて説明した。

» 2019年09月10日 11時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
LIXILの二瓶亮氏 LIXILの二瓶亮氏

 LIXILは2019年8月30日、同社の研究開発拠点であるLIXIL WINGビル(東京都江東区)で会見を開き、研究開発を担うテクノロジー部門の取り組みや、“未来の生活価値”の実現に向けた研究開発戦略「3×4」などについて説明した。

 同社 テクノロジー部門のトップで取締役 専務役員 CTOの二瓶亮氏は「当社グループはさまざまな建築材料と住宅設備機器を手掛けており、業界トップの製品も多数ある。研究開発を担うテクノロジー部門としては、住生活のあらゆるシーンで先進技術を追求し、未来の豊かで快適な暮らしの実現に貢献していくことを目指している」と語る。

 LIXIL発足前のトステムやINAXなど各社の研究開発部門を統合して設立されたテクノロジー部門は、二瓶氏のもとで融合を進めてきた。LIXILの本店所在地である旧トステム本社のLIXIL WINGビルに多くの人員が集結しており、2019年11月の新棟完成に合わせた同ビルへの本社機能の集約後には、さらに研究開発を加速させたい考えだ。

LIXILが手掛ける住まいに関わるさまざまな製品やサービス LIXILが手掛ける住まいに関わるさまざまな製品やサービス(クリックで拡大) 出典:LIXIL

3つの未来の暮らしのシナリオ、2つの未来の暮らしの価値、4つの技術分野

 会見では、テクノロジー部門が管轄する部署の内、「研究戦略部」「ビジネスイノベーション統括部」「人間情報科学研究所」の3つが活動内容を紹介した。

LIXILのテクノロジー部門の体制 LIXILのテクノロジー部門の体制と「研究戦略部」「ビジネスイノベーション統括部」「人間情報科学研究所」の位置付け(クリックで拡大) 出典:LIXIL

 研究戦略部は、テクノロジー部門の研究開発テーマをより具体化するための研究戦略「3×4」を策定している。「3×4」では、3つの未来の暮らしのシナリオと、未来の暮らしの価値となる「ソーシャライズ」と「パーソナライズ」、そのために取り組むべき4つの技術分野から規定される。

研究戦略「3×4」の全体像 研究戦略「3×4」の全体像(クリックで拡大) 出典:LIXIL

 3つの未来の暮らしのシナリオは「社会の視点」「人の視点」「テクノロジーの視点」から成る。例えば「社会の視点」であれば、高齢化による医療や介護の費用の高騰が将来課題になっており、それに対する解決方法として「医療や介護を住まいで暮らしながら行える」が挙げられている。

 さまざまな想定がなされる未来の住まいでは、社会と結び付くための「ソーシャライズ」と個人のニーズに対応する「パーソナライズ」が求められるようになる。そのためにLIXILのテクノロジー部門が必要になると考えた4つの技術分野が「暮らしのディープデータ分析」「住まいと社会の連携」「カスタマイズデザインシフト」「人に寄り添う環境制御」である。

 これら4つの中で要になるのが「暮らしのディープデータ分析」だ。IoT(モノのインターネット)技術の急速な進化によって住まいに関するデータを収集できるようになり、これらをAI(人工知能)やデジタル技術で分析することで新たな生活価値を提供できるようになる。LIXIL Technology Research本部 研究戦略部 部長の本村雅洋氏は「例えばヘルスケア分野であれば、年間1回の健康診断だけでなく、普段の住まいでの生活から得られるデータによって予防医療的なことも可能になるだろう」と語る。

「3×4」における4つの技術分野 「3×4」における4つの技術分野。要になるのが「暮らしのディープデータ分析」だ(クリックで拡大) 出典:LIXIL
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