簡単操作で最低限の切り返し、ダイハツの駐車支援機能が目指したこと自動運転技術

ダイハツ工業が2019年7月に発売した軽自動車「タント」の新モデルは、駐車時のステアリング操作をアシストする「スマートパノラマパーキングアシスト」がメーカーオプションで設定されている。従来のシステムからハードウェアを大きく変更せずにコストを抑え、簡単な操作で、なおかつ少ない切り替えしで駐車を完了させることを目指した。

» 2019年08月22日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 ダイハツ工業が2019年7月に発売した軽自動車「タント」の新モデルは、駐車時のステアリング操作をアシストする「スマートパノラマパーキングアシスト」がメーカーオプションで設定されている。従来のシステムからハードウェアを大きく変更せずにコストを抑え、簡単な操作で、なおかつ少ない切り替えしで駐車を完了させることを目指した。

2019年7月に発売した新型「タントカスタム」(左)。ステアリングとカメラと「P」が書かれた右下のスイッチを押すと駐車支援がスタートする(右)(クリックして拡大)

 システムの開発に当たって念頭にあったのは、駐車支援がスタートするまでの操作を分かりやすく簡単にすることだったという。ダイハツ工業の担当者は「他の自動車メーカーの機能では、縦列、横列、前向き駐車にする……と最初の段階でコマンド選択が多い。駐車位置を細かく設定する機能もあるが、かえって使い方を迷う人もいるのではないか」と説明。スマートパノラマパーキングアシストで横列駐車する場合は、駐車したい枠に対して、1m程度幅寄せしてドライバーの真横に見えるように停止し、ステアリングのスイッチを押すと、画面上で「このスペースに駐車しますか」という案内が表示される。

 駐車スペースは、車両の前後とサイドミラーに取り付けられた合計4つの単眼カメラで検知する。カメラのハードウェアはダイハツ工業の従来システム「パノラマモニター」から流用している。大前提としてタントは電子プラットフォームを全面刷新しているが、パノラマモニターからの変更点は「ECU(電子制御ユニット)に白線の認識処理を行うマイコンを追加したことくらい」(ダイハツ工業の担当者)。これによりコストを抑えた。

 スペースを決定すると、駐車時に前進する範囲がカーナビゲーションシステムの画面に色付きで示される。ドライバーが安全を確認した上で駐車を開始するというアイコンを選択すると、「前進してください」「シフトレバーをRに切り替えてください」「バックしてください」「ブレーキを踏んでください」という指示がブザー音とともに画面上に逐一出てくる。それに従ってドライバーがペダルやシフトレバーを操作すると駐車が完了する。

駐車支援機能を利用中の様子。想像以上に取り回しがスムーズ(クリックして拡大)

 スマートパノラマパーキングアシストは、女性の一般ユーザーを集めて意見を聞きながら開発を進めた。その中で上がった声の1つが「自分が駐車している時に待っている人がいると気になる」というものだ。待っている人がイライラしていたら、もしクラクションなどで急かされたら……と不安に感じるのだという。これを受けて、“一発で駐車スペースに収めること”に挑戦した。

 スマートパノラマパーキングアシストは、駐車時に前進する範囲について、駐車場の通路の幅に合わせて2段階設定されている。ドライバーが手動運転で駐車する場合と同じで、通路が狭い駐車場であれば最初に前進できるエリアが限られるが、通路が広ければ余裕をもって前進し、後輪の位置を駐車枠に合わせやすくなるからだ。駐車支援はドライバーが画面で「広い」「狭い」のどちらかを選択するとスタートする。

駐車場の通路の広さに合わせて設定できる。「広い」(左)と「狭い」(右)では駐車前に前進する範囲が変わる(クリックして拡大)

 右側にクルマ、左側は空車というスペースをターゲットに実際に体験してみると、「広い」を選択した場合は切り返しせずに、1度の前進と後退で駐車枠に収まった。カギは「ちょっと据え切りすること」(ダイハツ工業の担当者)。目標位置に向かって前進するときアクセルペダルを踏み過ぎないこともポイントだ。

スマートパノラマパーキングアシストが完了した後。少し斜めだが、枠の中央に駐車した(クリックして拡大)

 ちなみに、駐車支援機能を体験したのは宿泊施設に併設の駐車場で、通路や駐車スペースの幅、横の車両との距離もごく一般的だ。そして、「狭い」を選択すると1度切り返して駐車が完了。タントは軽自動車なので、スペースが狭く区切られた「軽枠」で使うことも踏まえて開発したという。

 当初、ダイハツ工業の社内では「駐車支援機能は本当に必要なのか」という意見もあった。しかし、実際に体験すると、自分で駐車する方が早いと思っていた人から「この機能は、あってもいい」と評価を得られたという。

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