一方で、製造業企業のM&Aではオペレーション改善が重要な要素であるにもかかわらず、「日系企業のM&Aでは買収前のデューデリジェンスでは財務、税務、法務の3面が重要視され、オペレーションデューデリジェンス(オペレーショナルDD)がほぼ実施されない傾向にある」(鈴木氏)という。
特に同業種のM&Aでこの傾向が多いとし、鈴木氏は「自分はこの事業を分かっていると思い込んで(オペレーショナルDDを)実施しないケースが多い。工場見学だけで(オペレーショナルDDを)済ませた気になる企業もおり、オペレーショナルDDに対する感度が低い日系メーカーは多いのではないか」と警鐘を鳴らした。
オペレーショナルDDではQCD(品質、コスト、納期)と4M(人、機械、材料、方法)の観点から買収先企業の生産オペレーション評価を定量的かつ客観的に行う。鈴木氏は「オペレーショナルDDで収集されたデータによって、買収先企業でどこの工場のパフォーマンスが優れているのか、どこと自社拠点を統廃合することが最も効率良いかといった判断が可能になる」とメリットを説明する。
また、M&A後のシナジー創出フェーズにおいても課題がある。それは、企業に生産戦略がない、もしくは戦略を担う人材が不足しており、M&Aの果実であるオペレーション改善がM&A前に描いた計画通りに果たせないことだ。鈴木氏は「日系企業の中期経営計画を見ると、財務目標や販売戦略はしっかりと書いてあるが、その裏付けとなる生産戦略が省略されていることが多い。また、生産戦略の策定が抜け落ちている企業もある」と指摘。「生産戦略を策定し、それを実行する人材の設置が急務である」と述べた。
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