PwC Japanグループは2019年6月7日、「製造業のM&Aに欠落しがちな視点〜生産改革と見えない資産を評価することの重要性」をテーマにメディアセミナーを開催。日系製造業のM&Aトレンドを解説するとともに、製造業M&Aの成否を左右する「オペレーショナルデューデリジェンス」の重要性を訴えた。
PwC Japanグループは2019年6月7日、「製造業のM&Aに欠落しがちな視点〜生産改革と見えない資産を評価することの重要性」をテーマにメディアセミナーを開催。PwCアドバイザリーでパートナーを務める鈴木慎介氏が登壇し、日系製造業のM&Aトレンドを解説するとともに、製造業M&Aの成否を左右する「オペレーショナルデューデリジェンス(以下オペレーショナルDD、生産オペレーション面における買収先の調査)」の重要性を訴えた。
2016年1月から2019年5月までに実行された日系企業が関わるM&Aは医薬品と電機領域で特に活発な動きが見られた。医薬品領域ではバイオ医薬品のパイプライン拡大やジェネリック医薬品の再編を見越した案件が増加し、同期間における領域全体での年平均額は3兆円超に達する。
電機領域では大手総合メーカーが事業売却をしたケースが目立つ。大手電機メーカーが傘下の事業会社を同業他社に売却した案件では、フォルシア(Faurecia)によるクラリオン、マクセルによる日立ビークルエナジー、UMCエレクトロニクスによる日立情報通信マニュファクチャリング、キヤノンによる東芝メディカルシステムズの買収などが記憶に新しい。また、投資ファンドを買い手とする案件も増えており、日立オートモティブシステムズメジャメントや東芝メモリといったファンドへの事業売却や、経営再建のためファンド傘下に入ったパイオニアなどがあった。
鈴木氏は、製造業企業におけるM&Aの成否は原価率低減に向けたコストシナジーが創出できるかにあると指摘する。買収先企業の価値向上には、新規事業創出や自社事業との統廃合による「戦略的事業構造改革」、営業体制や生産拠点統廃合などサプライチェーンの「オペレーション改善」「バランスシートと税務の最適化」といった手法があるが、その中でもオペレーション改善は特に効果が大きい。「最近のM&Aは入札方式を取ることが多く、買収先企業を高値づかみするケースがある。のれんの減損損失を将来発生させないためにも、M&Aでは買収先企業のオペレーション面におけるバリューを深く検討することが重要」(鈴木氏)とする。
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