ブラックベリーは、国内半導体商社のネクスティ エレクトロニクスとの間で、車載分野を中心に組み込みソフトウェアを展開するBlackBerry QNXのVAIプログラムを締結したと発表した。
ブラックベリー(BlackBerry)は2019年5月16日、東京都内で会見を開き、国内半導体商社のネクスティ エレクトロニクス(以下、ネクスティ)との間で、車載分野を中心に組み込みソフトウェアを展開するBlackBerry QNX(以下、QNX)のVAI(Distributor and Value-Added Integrator)プログラムを締結したと発表した。
QNXは、カーナビゲーションシステムやデジタルクラスタなどの車載情報機器を中心にOSやミドルウェアをグローバルに展開している。VAIプログラムに締結したパートナーは、QNXの各種製品や開発ツールの他、ブラックベリー傘下のサーティコム(Certicom)の暗号化やセキュリティ関連製品の販売に加えて、関連する技術サポートとサービスが得られる。VAIプログラムに参加するパートナーは、ネクスティで15社目。なお、国内で事業を展開するパートナーとしては、日立産業制御ソリューションズ、日立ソリューションズ、アイ・エス・ビー、富士ソフトなどの国内系の他、Archermind、ThunderSoft、Tata Elxsi、光庭インフォなど海外系も活発に活動している。
ADAS(先進運転支援システム)から自動運転技術に向かう中で、車両内だけでなく車両外にあるクラウドと通信でつなげる上で必要なセキュリティ技術も取りそろえていることもあり、QNXが提供する車載プラットフォームへの需要は高まっている。さらに、これまでのQNXでは対応が難しかった、32ビットMMUを持たないマイコンレベルのプロセッサについても、リアルタイムOS「OpenRTOS」や「SAFERTOS」を展開するWittenstein high integrity systemsと提携することでカバーできるようになった。
QNXの国内展開を統括するQNXソフトウェアシステムズ ビジネスデベロップメント マネージャーの中鉢善樹氏は「従来は、OSやミドルウェアなどのソフトウェアコンポーネントを提供してきたQNXだが、現在はそれらを組み合わせて提供するプラットフォームベンダーになりつつある。そして今後は、さらにサードパーティー製品も統合したインテグレーテッドソリューションを展開していきたい。パートナーにネクスティが加わることで、その展開を加速できるのではないか」と語る。
ネクスティは、トーメンエレクトロニクスと豊通エレクトロニクスが統合して2017年4月に設立された豊田通商グループの半導体商社だ。売上高約5000億円のうち自動車分野向けが77%を占めるなど、特に中京、東海地区の自動車産業との関係は深い。国内の大手自動車メーカーやメガサプライヤーにQNXの浸透を加速させたいブラックベリーとして、ネクスティがVAIプログラムのパートナーに加わることは大きい。
またネクスティにとっても、ADASや自動運転技術が加速度的に進化する中で、より高度なソフトウェア技術の提供を求められるようになっている。前身の1社である豊通エレクトロニクスは、国内車載ソフトウェア標準化団体であるJasParの設立に加わっており、その後タイと中国の大連にオフショアのソフトウェア開発拠点を開設するなど、独自にソフトウェア事業を強化してきた。しかし、「自社単独の取り組みでは、今の自動車業界の要求に応え切れない。他のソフトウェア企業との強固なパートナーシップ構築が必要と考え、QNXのVAIプログラムのパートナーに加わることを決めた」(ネクスティ エレクトロニクス プロジェクト推進部 プロジェクト推進1グループ グループリーダーの樋口基久氏)という。
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