「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2019年3月14〜15日、都内で「IVI公開シンポジウム2019-Spring-」を開催。今回は世界経済フォーラム(WEF) 第4次産業革命日本センター長 須賀千鶴氏による講演「デジタル経済の動向と日本の立ち位置」の内容を紹介する。
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2019年3月14〜15日、都内で「IVI公開シンポジウム2019-Spring-」を開催した。
今回はその中から、世界経済フォーラム(WEF) 第4次産業革命日本センター長 須賀千鶴氏による講演「デジタル経済の動向と日本の立ち位置」の内容を紹介。WEF 第4次産業革命日本センターの位置付けと、第4次産業革命時代に最適なデータガバナンスの在り方についてお伝えする。
WEFは毎年1月にスイスの保養地であるダボスに世界各国の首脳や主要企業の幹部などを招き、世界経済の在り方などを議論する「ダボス会議」を主催していることで有名である。このダボス会議を作ったクラウス・シュワブ(Klaus Schwab)氏が、ダボス会議に出席するような主流派以外の人々も取り込み、データが中心となる第4次産業革命における最適な姿の在り方を模索するために2017年3月に米国サンフランシスコに創設したのが、「WEF 第4次産業革命センター」である。
産業界や政府、学界など多様な関係者が参加し「データポリシー」「人工知能、機械学習」「IoT、ロボティクス、スマートシティー」「ブロックチェーン、分散台帳テクノロジー」「電子商取引」「自動運転、都市交通」「ドローンと次世代航空宇宙」「個別化医療」「地球のための第4次産業革命」の9つの分野でプロジェクトを進行中だという。
ダボス会議は基本的にはスイスのダボスでの開催となるが、第4次産業革命センターについては、当初からグローバルネットワークを作ることが想定されていたという。さらに、中国、インド、日本については、最初に地域センターを設置することが決まっていた。
第4次産業革命日本センターは2018年7月に、WEF 第4次産業革命センターの世界で最初の支部として発足したが、WEFと日本政府(経済産業省)、アジア・パシフィック・イニシアティブの3者によるパートナーシップで生まれた合弁企業という位置付けとなる。設立に向けた苦労について須賀氏は「経済産業省はそもそも外部パートナーと協業を行ったことなどがなく、合弁企業を作るためのデューデリジェンス(価値やリスクの調査)を行う機能もないような状況だった。一方でWEFは中立性を重視しており、特定の企業や国と協業することはなかった。それぞれが初めての取り組みだった」と述べている。
こうした苦労を乗り越えてまで日本に第4次産業革命センターの拠点を作った意図について須賀氏は「WEFからは、日本は政権が代われば方針が大きく変わるため、継続的な取り組みを進めるためには、政府そのものがステークホルダーとして入るような仕組みを作らないと駄目だという認識があった。一方で、日本政府側にとっては、第4次産業革命による大きな変化が同時多発的に起こる中で情報収集が難しく、自分たちだけでスピード感を持って情報を把握し、正しい打ち手を行うには限界があるという認識があった。それぞれの思惑が一致して生まれたユニークな存在だ」と須賀氏は位置付けの特殊さについて語る。
それでは、日本センターではどういう取り組みを行っているのだろうか。当面の注力分野としては「データ政策」「モビリティ」「ヘルスケア」を挙げ、Society 5.0の世界への窓口として各国の産官学の参加するプロジェクトを推進。グローバルなルールや政策の枠組み、これらを実現するシステムの在り方を検証しているという。
須賀氏は「共通しているのは『ガバナンスギャップの解消』がテーマ。ガバナンスギャップには2つの側面があり、1つは時代の最先端の状況に対し、政府の対応や政策が追い付いていないという面である。もう1つは、政府ごとに打ち手が違いすぎて共通の落とし所が見つからないという面である。これらを相互運用性のある形で理想的な姿を探ろうというのが取り組みの本質的な狙いである」と述べている。
各プロジェクトでは、具体的には注力分野を決定するための「Opportunity Mapping」、政策の枠組みやプロセスを決める「Policy Co-Design」、実証や仮説検証を行う「Piloting」、成果を公開し普及する「Scale」の4つのステップで進めている。
須賀氏は「例えば、Opportunity Mappingでは、さまざまな文献やニュースなどからキーワードをひたすら拾い続けるという作業を半年間やり続けた。これらのキーワードからさらに上位概念を抽出し、それに対しての応えを用意していく(Policy Co-Design)という作業となる。そしてその解答を生み出すことができれば、それをまず国内で仮説検証(Piloting)し、そこで成果が出ればグローバルに広げていく(Scale)という流れだ」と具体的な取組内容について語る。
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