MONOist EXAMATION以外ではどのような取り組みを行っていますか。
國武氏 EXAMATIONだけではなく、工場の中でBIO、BIDの考えをさらに広げていくためにさまざまな技術開発も進めている。その1つが機械のセンシングを行う「タイミングアナライザー技術」だ。データを取りたくても、古い機械だと難しい場合もある。そこで、これらをコントロールするPLCの制御を邪魔することなく情報を簡単に取得できるようにしたのが、このタイミングアナライザー技術だ。独自の専用モジュールで簡単設定で制御盤などに後付可能。イベント発生時のみ通信を行う形としデータ負荷なども小さい。これらのようにデータの取得できる範囲を徐々に拡大していく取り組みを進めている。
また、人作業の領域のセンシングにも取り組み始めている。これは鉱山用機械のタイヤや航空機用タイヤなど大きなタイヤでの作業など、自動化の難易度が高い領域での採用を進めている。これらの大型タイヤは部品点数なども多く、信頼性なども求められるために、人手の作業がどうしても残る。それに対し生産作業者の教育や日本からの熟練技能者の指導などが必要になっていたが、人作業をモーションセンサーや圧力センサーなどでデータ化し、熟練工スキルとの比較訓練などで技能伝承を実現するとともに、教育負荷を低減する。また、モーションセンサーによる常時監視により標準逸脱時にロックするような使い方をしている。
現在タイに航空機用のタイヤ生産拠点を新たに建設中だが、今後、大型タイヤの海外工場への移管も増えるために、これらの熟練技術者の技能を海外新拠点に確実に伝承する必要性が高まっている。
MONOist エンジニアリングチェーンについてはいかがですか。
國武氏 さらに、これらのデジタル技術を活用したエンジニアリングチェーンの変革にも取り組んでいる。仮想空間でのシミュレーションをできる限り活用し、量産品質を作り込み、現実の試作コストを低減する取り組みである。
これを具体的に活用したのが、タイヤの加硫工程の製造品質対策でのシミュレーション活用である。タイヤの加硫工程では、金型にゴムを流し込んで型を付けるが、製造結果として不具合が出た場合にも何が要因だったのかが分からない場合も多かった。従来は色の違うゴムを流して、それぞれのゴムの流れを把握して修正するようなことを行ってきたが、これをシミュレーションにより開発段階で品質を作り込めるようにし、立ち上げのリードタイム削減を実現できるような取り組みを進めている。
MONOist 今後の方向性について教えてください。
國武氏 CASEなどタイヤが使用される環境そのものが大きく変化する中で、これらに柔軟に対応していくモノづくりが求められている。新たな材料が求められており、材料が変われば設備も変わり、作り方も変わる。こうした動きに対応していく。さらにそういう変化に向けて、過渡期であるので、需要や要望の変化に素早く対応していくことが必要となっている。これらを考えれば、デジタルの力をうまく活用していくことが生産現場にも求められている。BIOやBIDにより、データ活用への取り組みをさらに広げていきたい。
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