パイオニアが投資ファンドの完全子会社に、森谷社長「責任痛感も再建に必須」製造マネジメントニュース

パイオニアは、アジア向け投資を中心とする投資ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)との間で、BPEAからパイオニアへの770億円の出資と現株主からの約250億円での株式買い取りによる「パイオニア再生プラン」に合意したと発表した。早ければ2019年3月中にもパイオニアはBEPAの完全子会社となる見込み。

» 2018年12月10日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 パイオニアは2018年12月7日、アジア向け投資を中心とする投資ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)との間で、BPEAからパイオニアへの770億円の出資と現株主からの約250億円での株式買い取りによる「パイオニア再生プラン」に合意したと発表した。2019年1月25日開催予定の臨時株主総会の承認が得られ次第、投資と株式買い取りが実施され、早ければ同年3月中にもパイオニアがBEPAの完全子会社となる見込み。

 2019年3月期決算の営業損益が赤字に落ち込む見込みなど業績が低迷しているパイオニアは、企業運営のためのキャッシュフローも悪化しており、財務基盤の立て直しが急務となっている。今回合意したパイオニア再生プランにより、パイオニアの今後の事業運営に必要な運転資金を確保するとともに、BPEAの経営支援によって安定的な事業継続に対する不安を払拭(ふっしょく)し、事業運営の安定の実現を目指す。

 臨時株主総会の承認後に行われる770億円の出資は、520億円の金銭出資と、既に提供済みの250億円のデット・エクイティ・スワップから成る。運転資金の確保の後、現株主から約250億円で株式を買い取って完全子会社化を完了させる。買い取り価格は1株当たり66.1円(2018年12月7日の市場取引終了後の株価は1株当たり88円)。

 BEPAによる完全子会社化後は、事業ポートフォリオの見直し、構造改革、経営体制の刷新などの抜本的施策を遂行する。現取締役8人は、社外取締役2人と代表取締役 社長の森谷浩一氏を除いて全員が辞任し、BPEAからシェーン・プリディク氏と北見啓氏を新たに加えた体制となる。また、2019年4月から2年間で、国内外のグループ全体(派遣社員を含む)で約15%程度の人員削減を行う予定だ。

 森谷氏は「パイオニア再生プランを遂行するためには、成長軌道への回帰に向けてビジョンを共有するBPEAが最もふさわしいパートナーだと確信している。今回の決断に際しては、経営陣のトップとして責任を痛感しているが、パイオニア再建のためにはBPEAとのアライアンスが必須と考えている。私の責務は、できるだけ早期にパイオニアを再生させ、世の中に役立つ、ユーザーの皆さまに喜ばれる製品、サービスを提供していける体制を築くことだと考えている」と語る。

 一方、BPEAのCEO 兼 創業パートナーであるジォーン・エリック・サラタ氏は「BPEAは、2006年に東京オフィスを開設して以来、数々の日本企業を対象に、平均5年以上にわたる長期投資を行い、良好なパートナーシップを築いてきた。パイオニア再生プランのもと、今回の出資および経営支援を行うことで、革新的な技術と確立したブランド力に加え優秀な人材を誇るパイオニアが、潜在能力を十分に発揮し、今後も継続的に、世界中で皆さまに愛される“パイオニア”らしい製品を提供し続けることができると確信している」と述べている。

 パイオニアは運転資金確保に向けて、連結子会社の売却などを続けてきた。2018年6月にパイオニアFAを新川に(売却額約21億円)、同年8月にマレーシアのPioneer TechnologyのDJ機器製造事業をVtech Communicationsに(同約23億円)、12月に東北パイオニアEGをデンソーに(同約109億円)売却している。

 しかし、これらに加えて、追加的な運転資金の調達で120億円、既存借入金の返済で330億円、早期の収益性改善と人員削減と中心とする構造改善の実施で120億円、発行済みの新株予約権付社債の償還で150億円、成長事業における設備投資で25.4億円が必要になっていた。

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