カリミ氏によれば、自動運転技術の開発が進むことで車載システムのアーキテクチャは、現在の100個以上にもなるECU(電子制御ユニット)から構成される状態から、今後は10〜12個のメガECUともいえるドメインコントローラーに制御機能が集約されていくという。「これらのドメインコントローラーはOTAによるアップデートが必要であり、そのためにはセキュリティの確保が重要になる。ブラックベリーでは、スマートフォン向けに年間4000万回のソフトウェアアップデートをセキュアに行ってきた実績があり、これを自動車向けに展開する」(同氏)。
ただし、現在の自動車から一足飛びに自動運転車に市場が移行するわけではない。自動運転車市場は2025年から急速に成長を始め、2035年には8000万台を超えるという調査結果がある。しかし、この自動運転車市場の拡大とは別軸で、主にドライバーが運転操作を行うレベル3の自動運転車に搭載される形でADASの普及が着実に進んでいくことになりそうだ。
ブラックベリーは2018年6月、そういった自動運転車の実現に向けたADASの基礎となる車載ソフトウェアプラットフォーム「QNX Platform for ADAS 2.0」をリリースした。車載カメラやLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)、ミリ波レーダー、慣性センサー、GPSなどのセンサー情報を統合するセンサーフレームワークを持ち、さまざまなIPに基づくAI(人工知能)のアルゴリズム、自動運転車開発で広く用いられているROS(Robot Operating System)のアプリケーションなどを容易に実装できることが特徴。ルネサス エレクトロニクスやNXP Semicoductors、インテル(Intel)、NVIDIAの車載SoCの評価ボードをレファレンスとして使用できる。「現在、20以上の開発プロジェクトで利用されている」(カリミ氏)という。
またカリミ氏は、自動運転技術やADASなどによって複雑化かつ大規模化する車載システムの機能安全対応について「プロセッサやメモリのハードウェアランダムエラーの発生確率が高くなって、ハイゼンバグ(調査しようとすると変化したり消えたりするバグ)が増加し、機能安全の認証取得がかなり難しくなる。例えば、3つのプロセッサコアと疎結合のロックステップ技術を用い、最低でも2つのプロセッサコアの処理結果が同じであれば実行するといった仕組みが必要になるだろう」と述べている。
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