樋口氏が業績面以外で強調したのが「もともと3階建てで考えていた」(同氏)というCNS社の改革である。1階は文化面、2階は箱売りからソリューション売りへの転換、3階は持続可能な収益性に向けた選択と集中となる。
1階の文化面については2017年度にさまざまな取り組みを行った。2017年10月に実施した東京への本社移転に加え、「これまで概念がなかった」(樋口氏)というエンタープライズマーケティングの取り組み強化や、フラットで俊敏なカルチャーへの変革などがある。同氏は「会社でのキャリアが長くなると、足し算足し算で内向きの仕事が増えてしまう。会議ばかりやって何も決められないということも多い。この内向きの仕事を減らして、外向きのビジネスに最短距離で向き合えるように変えている。例えば週報を止めたりなどだ。もちろん今後も続けていく」と語る。さらに「個人的には、26年前に(パナソニックを)辞めた理由を一生懸命排除している感じだ」とも述べた。
2階の箱売りからソリューション売りへの転換では「空港向け出入国手続き」「警察向け映像管理」「大型イベント向け空間演出」「小売り向け電子棚札」など、さまざまな布石を打ってきた。B2B向けIoTサービス「μSockets(ミューソケット)」も拡充している。
そして今後は、製造、物流、流通の現場業務の生産性向上と継続的な価値創出を目指して「現場プロセスイノベーション」の提案を強化していく。樋口氏は「労働力不足により自動化省人化待ったなしのサプライチェーンに対しての“お役立ち”を提供していく。パナソニックの持つ技術だけでなく、ラストワンマイルまで向き合う企業姿勢、顧客との信頼関係が強みになる。そしてすり合わせが求められることによる模倣のされにくさなど、立地の良さもある。“お役立ち”のインテグレーターを目指していきたい」と説明する。
3階の持続可能な収益性に向けた選択と集中は、ソリューションシフトを進めた上で見えてくる。「さまざまなものに自動化の余地が出てくる。特に非製造業では自動化の領域が増えていくのではないか。自動化というと工場のイメージが強いかもしれないが、これからはあらゆる現場で起こる。そんなさまざまな現場で“お役立ち”を提供できるのはパナソニックだけだ。もちろん容易なことではないが、だからこそ実現できたときの価値は高い」(樋口氏)という。
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