けん引役となる二次電池事業では、2018年度から組織を再編。「二次電池事業部」「テスラBU」「エナジーデバイス事業部」の体制から「オートモーティブエナジー事業部」「テスラエナジー事業部」「エナジーソリューション事業部」「エナジーデバイス事業部」の4つの事業部体制へと変更した。
パナソニックの車載用電池事業は、テスラと協業する円筒形リチウムイオン電池と、トヨタ自動車(トヨタ)をはじめとする主要自動車メーカーに展開する角型リチウムイオン電池の主に2軸での取り組みを進めている。
テスラとは米国ネバダ州のギガファクトリーを共同で建設するなど強固な関係性を持ち、2018年度の車載電池の成長についても「大きくは米国のテスラ向けのものとなる」(梅田氏)としている。しかし、テスラ向けでは本来は2017年7月から量産を開始するとされていた「モデル3」の生産が遅れた。そのためパナソニックも2017年度は売上高で900億円、営業損益で240億円のマイナス影響を受けており、2018年度の業績にもリスクがないとは言い切れない状況だ※)。
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ただ、津賀氏は「テスラは多くの受注残を抱え、量産立ち上げに苦戦していることは確かだが、2018年度は間違いなく生産台数は増える。月ズレや期ズレはあるかもしれないが、何かが消えるということはないと考えている。逆にギガファクトリーにおいてテスラ側で『モデル3』の生産が軌道に乗った時に、電池側で立ち遅れないようにしたい」と懸念はないことをあらためて強調する。
車載における角型リチウムイオン電池への取り組みについては主に既存の自動車メーカーへの提案を強化する方針だ。2017年12月に車載用バッテリーにおいて協業の検討を開始したトヨタとの関係の進捗については「技術を開示し合うなど検討を順調に進めている」とする※)。
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増産体制の整備も進めている。2017年4月に中国大連市で車載用電池セルの新たな生産拠点が完成し、本格生産を開始した。さらに2019年度にはパナソニック液晶ディスプレイ姫路工場で車載用リチウムイオン電池を生産すると発表しており国内外での増産準備を進めている。
中国のNEV(New Energy Vehicle)市場の成長に対しては「NEV向けも当然対応していくが、いきなり中国でNEV向け電池を生産することにはならない。まずは日本の姫路工場や加西工場で量産できる形を作って、中国に移す方法を取る」と津賀氏は語っている。
さらに中国市場向けの取り組みとして「1つは大連工場を中心に日系自動車メーカーや欧米系自動車メーカーと組んで電池の展開を進めるという方法がある。2つ目がテスラとの関係性を生かし、テスラが中国での現地生産を行う際に一緒に進出する形だ。3つ目が中国ローカルのEVベンチャーなどへの展開だが、これは円筒形を中心に工場の生産能力を有効活用して攻めていきたいと考えている」と津賀氏は述べている。
パナソニックは2018年は創業100周年となるが「100年のいいところは残しながら、時代に合わせていかなければならない。変化が必要なところはスピード。モノの売り切りでなく、ハードとネットビジネスを融合する事業をできる限り多く増やしていく。そして、スピードが必要なところはソフトウェアやデータでの制御などで担うようにし、柔軟に変えられる事業をできる限り増やしていく」(津賀氏)。さらに津賀氏は「世の中の多くの産業がサービス産業になっていく中で、サービス産業をどのようにサポートするのかに力を入れていく。サービス産業にかかるしわ寄せを取り除いて、そこを成長の柱としていく」との考えを述べている。
こうした変化の中でB2Bシフトが進み、パナソニックそのものが「どういう会社なのか」というのが見えにくくなってきているが、これに対して津賀氏は「(家電の会社だと見られがちだが)複数の事業領域があり、家電の比率は現在でも3割弱くらい。そういう意味では一言ではいえない。ただ、あえてそれを表現するとブランドスローガンとしている『A Better Life, A Better World』ということになる。顧客の生活を豊かにする。そのためには(B2B事業などで)世界をより良くしていかないといけない」と述べる。そしてこのブランドスローガンを実現するために必要なのが「絶えず新しい領域にシフトしていくということだ。さまざまな事業が存在する中、絶えず新しいお役立ちにシフトしていける会社としなければならない。企業として絶えず変化し続けることが重要だ」と津賀氏は強調した。
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