コンサルタントとして仕事の進め方や組織の改革提案を行ってきた筆者が語る“マネジメント力による課題解決”。最終回となる今回はマネージャーとしての「人間力」についてお伝えします。“人に好かれる力”が、「組織」「人」を動かします。
私はこれまでコンサルタントとして数々の問題解決に挑み、「問題解決」に必要なのは「論理的思考力」と「人間力」だということに行きつきました。そして、それは「マネジメント」においても同じである、という前提から、この連載がスタートしました。
特に、私が“最も大変”と感じている新人マネージャーの方々へ向けた「マネージャーとしての心構え」のようなものをお伝えしてきましたが、最終回では「人間力」についてお話ししようと思います。
「人間力」とは「人に好かれる力」とも置き換えることができます。これは相手を重んじ、敬い、人のために考え行動することで身につきます。自分のためだけに動いているマネージャーに、部下はついてきません。そして、「人間力」を身に着けるために意識してほしいのが「利他主義」と「当事者意識」です。
「利他主義」は「利己主義」の対義語。「利他主義」と聞くと、自分を犠牲にしてでも人のために、と想像する方もいるようですが、そうではありません。自分の利益よりも他人の利益を優先する考え方で、私は“自分のメリットよりも、相手のメリットが一つでも多い状態にすること”と考えています。
さて、この「利他主義」がマネジメントとどう関係するのでしょう。
「相手のメリットを優先する」というのは、お客さまに対しての姿勢としては想像しやすいかもしれません。少しでも相手に喜んでもらう、気持ちよくなってもらうためにサービスをする。ただ、この姿勢は社外だけでなく、社内でも意識されるべきなのです。あなたは部下に“サービス”できていますか?
マネージャーとなると、部下にさまざまな業務の指示を行うことが多いと思います。これを喜怒哀楽でコントロールし、力ずくで言うことを聞かせていては、“自ら動けるメンバー”が生まれることはありません。
メンバーが自らアクセルを踏める組織にするには、部下に頼んだ仕事以上に自身が動き、メンバーが仕事をしやすい状況を作ってあげること。それは物理的な仕事量なのかもしれないし、進めやすい環境なのかもしれないし、上手く進めるための情報提供なのかもしれない。とにかく、部下にただ仕事を任せるだけではなく、自分自身がそれ以上にサービスをすることを意識してみてください。
人は人の鏡です。上司が自ら動いていない限り、部下も自ら動くことはなく、常に指示には“やらされ感”が漂います。
私は「仕事の貯金」と呼んでいるのですが、人は誰かに仕事を助けてもらった分、その人に対しても助けてあげよう、協力してあげようと思うもの。逆に、常に指示してばかり、ピリピリしていて耳を傾けてくれないという人に対して“強制感”は生まれても、“自ら協力したい”という思いは生まれません。部下に対してサービスできているか、振り返ってみてください。
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