次に、「余裕時間」の分類別に、それぞれの内容について以下に説明します。
(1)定義
作業余裕とは、作業に直接関係した作業要素で、作業の特殊性から不規則に発生する遅れの時間のことで、ある期間に対して平均値として与えることができるものをいいます。作業余裕は、作業サイクルとの関連性の程度によってその扱いが異なります。作業のサイクルと無関係に発生する場合は、1日の仕事時間に対する割合(%)で表し、数サイクルに1回といった、ある程度規則的に発生する場合は、その時間値を回数で除して1回当たりの時間値を算出して正味時間に加えて表すようにします。
(2)作業余裕として取り扱う項目と内容
(1)定義
職場余裕とは、作業に直接関係はしないが、職場の管理や工場生活が起因して発生するもので、工場の管理方式によって左右される遅れの時間をいいます。ある期間に対して平均値として与えることができる項目をいいます。
職場余裕は、手待ちや打ち合わせといった内容を正味時間の何%という表し方は実際には難しく、むしろ1日の仕事時間の中の何%を占めるかということで表します。
(2)職場余裕として取り扱う項目と内容
(1)定義
個人余裕とは、作業者の生理的、保健的理由によって生ずる遅れ時間や、個人の権益を保護する上で必要とする遅れの時間です。
個人余裕の取扱いは、正味時間の何%として与えるのではなく、1日の仕事時間の百分率(%)として与えられます。
(2)個人余裕として取り扱う項目と内容
(1)定義
疲労余裕とは、工場生活において、工場で定められた作業ペースで作業を遂行するために必要な疲労回復などの遅れ時間です。
疲労余裕は、ほとんど特定の要素作業(作業種別)に対して付加していくのが一般的な取扱いですので、正味時間に対する割合で与えられます。
一方で、正常な作業ペースと、観測した作業ペースを比較判断し、観測時間値を正常ペースの時間値に補正する“レーティング(Rating)”の時に困難度を考慮しているので疲労余裕は不要であるという考え方もあります。
(2)疲労余裕として取り扱う項目と内容
一般的には、体操、休息、喫煙などによる遅れ時間で、生産形態、作業密度(精神的負荷)、作業姿勢、重量物の取扱い(肉体的負荷)の程度などによって与えられます。
疲労余裕は、作業者のエネルギー消費量を基礎代謝量での倍率で示す“エネルギー代謝量(RMR:Relative Metabolic Rate)”を使用して検討する方法も用いられています。
以上の4つの余裕時間の他に、作業の習熟過程にある作業者に対する余裕であるとか、機械設備を複数台持ちで作業している時、作業者が機械の材料補給や加工品の脱着、調整などの作業を行っている間に、他の機械が停止、あるいは空転状態になる機械干渉、組み立て工程や加工工程などの各作業者あるいは機械設備間の負荷バランス効率(ライン編成効率)に対する余裕、季節の移り変わりによる環境条件の変化に対する余裕などが問題となる場合もあります。
しかし、今回は一般的な説明の範囲とさせて頂きました。明確なことは、いずれの場合でも、それぞれの事柄について改善していく努力が重要であることはいうまでもありません。
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