「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

自動車業界が5Gに手のひらを返した「MWC 2018」、そしてDSRCとの選択が迫られる次世代モビリティの行方(2)(1/3 ページ)

これまでスタンドアロンな存在だった自動車は、自動運転技術の導入や通信技術でつながることによって新たな「次世代モビリティ」となりつつある。本連載では、主要な海外イベントを通して、次世代モビリティの行方を探っていく。第2回は「Mobile World Congress 2018」の自動車関連の動向をレポートする。

» 2018年03月27日 10時00分 公開

 2018年2月26日〜3月1日にかけて、スペイン・バルセロナで開催されたモバイルの祭典「Mobile World Congress(MWC) 2018」のキーワードは同年1月の「CES 2018」と同様、「5G」と「AI」であった。そして、その5Gのユースケースとして大きな期待を集めているのが「自動車」というのも例年通りであった。

 これまでは自動車業界に近い筋から「5Gはいらない」「5Gでなくてもできる」という言葉を耳にすることが多かった。しかし、徐々に5Gを活用したユースケースが提案され始めている。これは、少しずつ仕様策定が進み、これまでのビジョンがより具現化してきたからだといえる。特に、2016年9月、3GPPでLTEを利用した車車間(V2V:Vehicle to Vehicle)通信の初期仕様が標準化され、2017年3月に策定が完了したLTE Release 14に「C-V2X(Cellular V2X)」としてその機能が盛り込まれたことがあるだろう。MWC 2018では特に、C-V2Xに関するソリューションが非常に目立った。

 本稿では、MWC 2018で紹介されたC-V2Xの活用を中心に各社の取り組みについて紹介する。

C-V2X向けチップの登場

 C-V2Xとは、セルラー網を活用することにより、車車間や路車間(V2I:Vehicle to Infrastructure)、歩車間(V2P:Vehicle to Pedestrian)、そして車両とネットワークの間(V2N:Vehicle to Network)の通信を実現する技術を指す。C-V2Xの最大のメリットは、従来のDSRC(狭域通信:Dedicated Short Range Communications)とは異なり、狭域通信だけでなく広域通信をも単一技術で提供できる点にある。

 2017年4月から、C-V2Xのダイレクト通信を活用したトライアルが世界各国で実施されてきた。2017年9月にはクアルコム(Qualcomm)が初の3GPP Release 14に準拠したC-V2Xチップセット「Qualcomm 9150 C-V2X Chipset」を発表した他、ファーウェイ(Huawei)がMWC 2018でC-V2X向け車載モジュールを出展。いよいよ商用化に向けた本格展開が始まりそうだ。

クアルコムのC-V2X向けチップファーウェイのC-V2X向けチップ クアルコム(左)とファーウェイ(右)がC-V2X向けチップを発表(クリックで拡大)

 現在はチップセットを車両に搭載して検証している段階にある。既に米国では、クアルコムとノキア、フォード(Ford Motor)、AT&Tおよび政府が連携して、クルマと信号機のV2I通信に関する実証実験を行っている。また2018年1月には、コンチネンタル(Continental)、NTTドコモ、エリクソン(Ericsson)、日産自動車、沖電気、クアルコムが日本初のC-V2Xの実証実験を行うことを発表するなど、商用化に向けた動きが活発化している。

NTTドコモ 社長の吉澤和弘氏は「MWC 2018」の基調講演で日本におけるC-V2Xへの取り組みを紹介した NTTドコモ 社長の吉澤和弘氏は「MWC 2018」の基調講演で日本におけるC-V2Xへの取り組みを紹介した(クリックで拡大)
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