大浦氏の講演では電話から録音した音声を基に、クレームで電話をかけてきた女性の声から怒りだけでなく喜びも検知した様子を紹介した。
音声での感情認識の課題は幾つかある。1つは「笑い」の検知だ。「笑い方は、皮肉やあざけり、楽しさやうれしさまで幅広い。笑った声を認識するだけでは感情を読み取るのが難しい。表情や会話の文脈まで関わってくる」(ソフトバンクの説明員)。もう1つの課題として、本人や他人から認識できる感情や興奮には限度があり、「本人も自分の気持ちが分からないということはよくある。音声感情認識エンジンでも100%の認識率にはならない」(大浦氏)
感情AIのもう1つの技術、感情生成エンジンはパーソナルロボット「Pepper」にも搭載されている。モノに搭載されたセンサーなどから入力される外部情報を基に疑似的なホルモンバランスを作りだし、モノに感情を持たせるというものだ。
感情生成エンジンは、緊張を感じている時のアドレナリン、好意を持つ人に対してワクワクする時のドーパミン、のんびりと休養している時のセロトニンといった、神経伝達物質と関連する情動や反応を人工的に作り出し、人間と同じ仕組みで感情を持たせようとしている。
大浦氏は、走行中の二輪車の制御に合わせて神経伝達物質を分泌させ、感情を生成した例を紹介。実験にはホンダ向けにモータースポーツ用エンジンの設計開発やチューニングを手掛けるM-TEC(無限)が協力し、電動二輪の「神電」を提供した。
実験では、車両のアクセルをノルアドレナリン、バンクの角度をセロトニン、モーターの動きや温度をドーパミンやエンドルフィン、などといったようにセンサー情報と関連付けた。車両の機能と神経伝達物質の組み合わせは、無限の開発チームと協力し、「神電が感情を持つとしたらどんな時にどのような反応をするか」を議論して決定した。
その結果、出走前はドキドキワクワクした感情を示し、速度が上がるにつれて「気持ちいい」「つらい」「狂おしい」が同時に発生し「ランナーズハイのような状態になった」(大浦氏)という。
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