3Dプリンタはインダストリー4.0の重要なピース?いまさら聞けない第4次産業革命(14)(2/3 ページ)

» 2017年06月30日 14時00分 公開
[三島一孝MONOist]

なぜ3Dプリンタが再注目されているのか

 さて前回、矢面さんはハノーバーメッセに参加したということでしたね。「地味化」とした傾向の他に、矢面さんには気付いたこともあったようですよ。

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印出さん、そういえば、ハノーバーメッセでは3Dプリンタに関する展示が多かった気がするんですが、日本では一時のブームが落ち着いた感じですよね。


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あら、面白いところに目を付けるわね。確かに、今回のハノーバーメッセでは3Dプリンタに関する発表や展示が多く出ていたわね。


 確かに、ハノーバーメッセ2017では3Dプリンタに関する出展が増えた印象です。例えば、米国GEはハノーバーメッセへの2回目の出展となりましたが、「Additive Manufacturing(積層造形)ゾーン」を設置しました。その中で、2016年に買収を発表したドイツの3DプリンタメーカーConcept Laser(コンセプトレーザー)の金属3Dプリンタおよび造形サンプルなどをアピールしていました。

photo GEがハノーバーメッセで出展したコンセプトレーザーの金属3Dプリンタ(クリックで拡大)

 また、ドイツのSAPもブース内でドイツの金属3DプリンタメーカーであるEOSの3Dプリンタを展示しています。新たにIoT基盤「SAP Leonardo」のアプリケーションの1つとして3Dプリンタ対応を進めていくことなどを訴えました。

photo SAPブースで展示されたEOS製の3Dプリンタ。パーソナライズ化が進む中で3Dプリンタを進むデジタルファブリケーション技術の重要性が高まるとSAPでは予測する(クリックで拡大)

3Dプリンタはマスカスタマイゼーションの1つのピース

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日本ではブームが終わった感じなのに、なぜハノーバーメッセで、特に3Dプリンタがメインではない企業から出展されたんですかね。


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そうね。1つの理由は、インダストリー4.0で目指す姿とされているマスカスタマイゼーションを実現するには、3Dプリンタを含むデジタルファブリケーション技術が必要になるからじゃないかしら。


 3Dプリンタは数年前に樹脂成形における特許期限切れが相次いだことで、一気に低価格化が進んでブームを呼びました。3Dプリンタそのものは試作に用いるラピッドプロトタイピングの1つのツールとして、以前から製造業では利用されてきましたが、この低価格化により「一般消費者向けにも広がるのではないか」との期待を集めました。そのブームについてはここ1、2年はすっかり沈静化してしまいました。日本でも金属3Dプリンタの領域では活発な研究開発などが進んでいますが、過度な期待は収束した状況だといえるでしょう。

 ただ、インダストリー4.0が目指す世界はマスカスタマイゼーションであり、製造業が提供する価値として「パーソナライズ化された製品」があります。こうした姿を実現するには、3Dプリンタのようなデジタルファブリケーション機器が必須になります。設計したものをそのまま形にすることが可能で、工程に柔軟性を与えることができるからです。

 造形スピードや材料の種類、価格、関連のソフトウェアなど、まだまだ3Dプリンタには、製品として技術面での課題が多く、他の製造工程を置き換え、製造業の工程の一翼を担うほどではありません。ただ、これらの課題を1つ1つ解決していくことで、新たな製造手法やワークフローなどを実現することができる可能性があります。マスカスタマイゼーションを実現するには、既存の工程の進化はもちろんですが、新たな技術による新たな製造方法も必要になります。その1つとして3Dプリンタは期待を集めているのです。

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