実はこれに先立ち、2009年3月に仕様が策定されたRelease 8の中にCat.1(Category 1)という仕様が既に策定されている。こちらは性能的には3Gに近いもので、
という仕様である。
このCat.1は言ってみれば、LTEをベースとした低価格ソリューションであり、LTE Cat.4(国内で言えば、ドコモのXiとかauのLTEサービス、ソフトバンクのSoftbBank 4G LTEといった2013年頃のサービス)向けのモデムの8割程度の価格で実現できるというものだったが、Cat.0はこのCat.1向けモデムのさらに半分の価格で実現できることを目指していた。「目指していた」と過去形なのは、規格的に中途半端で、十分なコスト低減や通信費低減が見込めないとして、結局モデムメーカーや通信事業者がいずれもCat.0の製品やサービスの開発を中止してしまったためだ。
ただそうこうしている間にSIGFOXやLoRaといった、低価格で屋外利用が可能なMTC/M2M向け通信規格が相次いで立ち上がった結果として、3GPPとしてもCat.0に代わる新しい規格の策定を急きょ行わざるを得なくなった。
こうした経緯で、2016年8月に最終的に仕様策定が行われたのが、Cat.M1とCat.NB1である。今回はこのうち、Cat.NB1をご紹介する。NBはNarrow Bandの略で、SIGFOXやLoRaと同じく狭帯域向け規格である。仕様策定作業中はNB-IoTという名前で呼ばれていたため、こちらの方が通りが良いかもしれない。
性能的には、
となっている。性能的にはLoRaやSIGFOXと近いのだが、大きな違いは周波数帯である。LoRa/SIGFOXがどちらもISM Bandを使うのに対し、NB-IoTではLTEで利用する周波数帯を使うことになる。
厳密に言えば、
のいずれかを選択することが可能である。だが、いずれにせよISM Bandとは異なり利用には免許が必要である。
その代わりであるが、Cat.NB1はLTEそのものと比べて4倍程度の到達距離が期待できる。送信の際の通信速度にsingle-toneとmulti-toneという2種類の通信方式があるが、multi-toneは180KHzの周波数帯を15KHzのサブキャリアという細かい12個の周波数帯に分割し、ここで一斉に通信を行う方式である。一方のsingle-toneは、この12個のサブキャリアの1つだけを使って通信を行う方式となる。当然single-toneでは通信速度そのものは落ちるのだが、その代わりに1個のサブキャリアに送信電力を集中できるので、より長い到達距離が可能になる、という仕組みだ。
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