先述の通り、TNGAではエンジンの設計をシリンダー単位で見直して最適な燃焼を実現、熱効率と出力の向上を両立する。最大熱効率はガソリンエンジン車用で40%、ハイブリッド車用エンジンで41%を達成した。最大熱効率40%は現行プリウスでも実現しているが、最大出力は40kW/lにとどまる。TNGAエンジンでは出力を60kW/lに高めた。
これを実現する“最適な燃焼”をさまざまな排気量のエンジンで共通化していく。シリンダー単位で新しい設計としたので、シリンダーを組み合わせる数によって、どの排気量でも最適な燃焼をモジュールとして展開することが可能になる。例えば、排気量500ccのシリンダーを3つ組み合わせることで排気量1.5lに、4つ組み合わせることで排気量2.0lとする。
トヨタ自動車が熱効率と出力の両立で最適だと判断したのは、従来よりも燃焼速度が15〜35%速い高速燃焼技術だ。速く燃焼することでシリンダーから熱が逃げにくくなり、燃料も無駄なく燃焼できる。
高速燃焼を実現するためには、空気をより多く吸入しながら、シリンダー内の空気の乱れを強くする必要がある。高速燃焼に理想的なポートや燃焼室の構造をモジュールとして作るため、ストローク/ボア比やバルブの角度、吸気ポートの形状の諸元などを検討した。
より多くの空気を吸入するには吸気ポートの形状を真っすぐにする必要があったが、従来ではバルブシートを圧入するスペースをとるために吸気ポートが曲がった形になっていた。
TNGAではレースで採用されてきた「レーザークラッド工法」を採用することにより、従来のバルブシートをなくして吸気ポートを理想的な形状とした。レーザークラッド工法は、銅系の合金と硬質粒子の粉末をレーザー光で溶融しながらシリンダーヘッド上に肉盛りするもので、表面に薄くバルブシートを形成する。高い耐摩耗性と耐熱性を実現できる。
これまでレーザークラッド工法は、レース以外では少量生産の車種向けの「ZZエンジン」に使われてきた。大量生産の幅広い排気量のエンジンで採用するのは初めてだという。
また、ストローク/ボア比は1.2としロングストローク化、バルブ狭角は41度に拡大するなど高速燃焼に必要な設計としている。
この他にも、「世界初」(トヨタ自動車)とする連続可変容量オイルポンプなど、出力向上やレスポンス改善に多くの新技術を採用した。
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