「製造業のサービス化」について、めっきり関心を高めている矢面氏。前回印出氏に「グーチョキパーツだとどういうことができるか、考えてみてはどう?」と言われてから、すっかりやる気になっているようです。
印出さん、こんにちは。うちの社長が「製造業のサービス化」にすっかり乗り気で「新たなサービスビジネスをすぐ始めろ」とか言い始めて、いろいろ大変なんです。
矢面さん、こんにちは。あら、この半年で一気にそんなところまで動き始めたのね。
そうなんですよ。売上高の皮算用なんかも始めちゃって、本当になんという変わり身の早さかと……。
グーチョキパーツでは、すっかり「製造業のサービス化」で成功するつもりのようですね。しかし、事業には成功もあれば失敗もあります。決してバラ色の未来だけが待っているわけではありません。
売上高の計算はいいけど「製造業のサービス化」には当然リスクもあると思うけど、そこは把握しているのかしら?
なんと、リスクなんてあるんですか! で、印出さん、リスクって何ですか?
矢面氏も少ししっかりしてきたかと思いましたが、まだまだ印出氏への依存体質は変わらないようです。
さて「製造業のサービス化」に向けたリスクには主に2つの点があると考えられます。
「製造業のサービス化」へのリスクの1つは既に広く知られているように「サイバーセキュリティ」ね。もう1つは少しぼんやりしているけれど「ビジネスモデルと契約の問題」といえるかしら。
「製造業のサービス化」において、考えなければならない点の1つ目が「セキュリティ」の問題です。IoTに関連してセキュリティの問題も徐々に注目度が高まっています。当然、通信と情報を扱うからにはサイバーセキュリティは切っては切れないものです。
製造業のサービス化を実現するには常に自社の製品とつながり続けている必要があるわ。そこから情報を奪われたり、改ざんされたりすることは常に起こり得るリスクよ。さらに、物理的に甚大な被害をもたらす可能性がある点がIoTの新たな点といえるわね。
従来のオフィスセキュリティとIoTのセキュリティの違いは、1つはセキュリティを想定された機器ではないものに対してもサイバーセキュリティを施さなければならないという点です。IoT化が進めばあらゆる製品に通信機能が追加されることになります。従来はセキュリティが必要ないと考えられてきた機器にセキュリティ機能を追加せざるを得ず、製品のソフトウェア設計や採用する部品の選択にも大きな影響を与えることになります。
もう1つは、被害が情報漏えいにとどまらずに物理的な被害につながるケースが増えると想定される点です。例えば、製造業のサービス化の流れの中で、予防保全サービスなどに活用していたデータが改ざんされれば、物理的に機械が壊れたり、それによる事故が発生し、最悪のケースでは多くの人命が失われるケースなども生まれる可能性があります。
さらに、IoTはまだ進化途中で正解例がないという話を繰り返したと思うけれど、こうしたセキュリティでもIoTにふさわしい形は見つけ出せていないという課題があるわ。
正しい対策がないんですか。それは怖い……。
IoTにおける環境は日々大きな変化の途中です。IoTによるビジネスモデルや情報の流れが定まっていない中で「セキュリティの定番形」を作り出すのは現実的には難しく、今はオフィス向けの技術や手法を無理やり当てはめているだけのケースが多いです。そのため、IoTによる新規ビジネスを優先すれば、セキュリティが甘くなり、逆にセキュリティを確保すれば、ビジネスとしての価値を失うというような場合が多く見受けられます。こうした発展途上の環境で、どうリスクを捉えて最小限に抑えるかということは、製造業のサービス化を進める上で考えておかなければならない点となります。
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