HILSの仕組みいまさら聞けないHILS入門(2)(2/4 ページ)

» 2016年05月30日 11時00分 公開
[高尾英次郎MONOist]

HILSコンピュータにプラントモデルを組み込む

 HILSコンピュータへのプラントモデルの組み込みは次のような手順で行います。

  1. プラントモデルを作成する
  2. ECU端子の電気的仕様に合わせて、端子ごとに入出力インタフェースの端子を割り当て、測定内容を設定する
  3. 入出力インタフェースの電気信号値をプラントモデル入出力端子の仕様(物理量)に合うように、電気信号⇔物理量変換係数を設定する
  4. 変換済みの入出力信号とプラントモデルの入出力を接続する
  5. プラントモデルと入出力設定をRTOS実行用ファイルに変換する(ビルド作業)
  6. HILSコンピュータに実行用ファイルを送り込み、RTOS上でプラントモデルに実行可能とする(デブロイ作業)
  7. HILS操作と作動状況観測に必要な信号に対して、UI項目を割り当てUI画面に設定する
  8. UI画面からHILSコンピュータ上の入出力インタフェースとプラントモデルを実行開始すると、ECUとHILSコンピュータの制御ループが作動する

UIを介してHILS上の制御システムをテストする

 それでは、連載第1回で取り上げたエンジン発電機システムのECUについて、HILSを使ってどのようにテストできるかを考えてみましょう。

 PC画面に設定したUIを操作してUIの値を変化させると、HILSソフトがHILSコンピュータの該当項目の値を変化させて、制御ループの動作に影響を与えます。制御ループの動作状況は、測定用UI項目を通じて観測することができます。

 図2にHILSの装置構成とUIイメージを示します。UI画面は、システムを操作/観測する観点から設計します。発電機システムと電気負荷を操作するためのスイッチを備えており、画面からシステムの操作を全て行えるようにします。同時にシステム状態変化を観測するのに便利な時系列のグラフを表示します。エンジン回転数やスロットル開度に加えて、エンジントルクや燃料消費量など実世界では計測装置を使わないと測定困難なデータも、HILSでは自由に測定できます。

図2 図2 HILS装置構成とユーザーインタフェース(クリックで拡大)

 UIを操作/観測することにより、以下の制御機能/性能のテストを実世界の発電機システム同様に行えるのです。

  • 起動・停止機能、アイドリング制御特性
  • 電気負荷0W〜1000Wにおける定常制御性能
  • 負荷変化時の過渡制御機能における回転数制御性能

 測定に関しては実世界よりもずっと簡単に、注目する信号をUI画面やログ項目に設定するだけで測定できます。テスト内容によって、必要なデータを簡単に追加計測することもできます。

 HILSでは、制御対象はバーチャルの世界で動いており、実際に動いているのはECUの電気信号だけです。HILS上でどのようなテストをしても、機械的に動くものはありません。危険なテスト条件であっても、実際に危険を及ぼす懸念が全くないことは、HILSの特徴の1つです。

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