三菱自動車は、長期間にわたり複数の車種で走行抵抗値を正規の手法で測定していなかった件について、国土交通省に対して追加報告を行った。正規に走行抵抗値を測定したのは「ミラージュ」と「デリカ D:5」のディーゼルエンジン車のみだった。正規の手法を導入できなかった準備不足や、「乖離は少ない」という判断が背景にある。
三菱自動車は2016年5月18日、東京都内で会見を開き、長期間にわたって複数の車種が正規の手法で走行抵抗値を測定されていなかった件に関し、国土交通省に対して追加報告を行ったことを発表した。4度目の会見となる今回は、軽自動車以外に三菱自動車が開発/生産している現行車種での不正の有無、高速惰行法が用いられてきた経緯を説明した。
三菱自動車は軽自動車以外の車種で不正が行われていないか、社内調査を実施した。その結果、国が定める惰行法で惰行時間を測定し、計算によるデータ補正を行わなかったのは「ミラージュ」とディーゼルエンジン搭載の「デリカ D:5」のみだった。
これら以外の、三菱自動車が現在、開発/生産しているモデルは以下のいずれかに該当する。
同社は既に軽自動車4車種の生産/販売を停止しているが、登録車に関しては生産/販売を継続する。
正規の手法でなかった車種の走行抵抗値を惰行法で正しく測定し直し、従来の走行抵抗値とともに燃費として比較すると「該当車種の燃費は本来の数値から±3%程度の振れ幅があるが、抜き取り検査による燃費のばらつき(3〜8%)を参照してもお客さまに迷惑をかけるレベルではないと判断した」(三菱自動車 副社長の中尾龍吾氏)ためだ。
本来は、走行抵抗値の計測については惰行法を用い、二輪駆動か四輪駆動か、ターボチャージャーの有無、エアロパーツなどボディ仕様の有無などを踏まえて、1車種の中に複数のグレードがあるならそれら全てについて惰行時間を計測する必要がある。
また、惰行時間の計測は各指定速度で、風の影響を鑑みて直線の往路3回/復路3回で合計6回行い、その平均値を出すよう定義されている。それを「(1.035×試験車重量)÷(0.36×平均惰行時間)」という計算式に入れて、走行抵抗値を求めなければならない。
「アウトランダーPHEV」は、搭載しているオプション装備の重量を加味せずに測定していたため、100kg分のオプション装備の重量は計算で上乗せした。
ガソリンエンジンの「アウトランダー」はタイヤの転がり抵抗の改善などを、同じくガソリンエンジンの「デリカ D:5」は二輪駆動車と四輪駆動車の走行抵抗値の差を計算で算出していた。
「RVR」は、2007年発売の「ギャランフォルティス」の転がり抵抗と、風洞試験設備で測定したRVRの空気抵抗を組み合わせて走行抵抗値として算出。ガソリンエンジンの「パジェロ」は、複数の同モデルで走行抵抗を測定したデータの中から最も良い転がり抵抗と空気抵抗を組み合わせて、1台の車両のデータとした。
日本向けの車両でのみ、不正や正規でない走行抵抗値の算出が起きたのは人員配置の影響による可能性があるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.