ハノーバーメッセ2016において第10回となる日独経済フォーラムが開催された。テーマは「実践の場におけるインダストリー4.0」とされ、会期中に発表された日独政府の連携なども含めて、日独の協力体制や土台作りに注目が集まった。後編では、日独両国が特に協調が必要だと語った「中小企業の支援」について紹介する。
ハノーバーメッセ2016(2016年4月25〜29日、ドイツ・ハノーバーメッセ)において2016年4月27日、第10回となる「日独経済フォーラム」が開催された。今回はテーマを「実践の場におけるインダストリー4.0」としており、前編では日独政府の連携と課題認識について紹介した。後編では、両国が共通の課題として認識しており、協調を進めていきたいと語った「中小企業への支援」について、紹介する。
前編でも紹介した通り、製造業を取り巻く環境を見た場合、日本とドイツの置かれている立場はよく似ている。GDP(国民総生産)の約2割が製造業が占めるなど、先進国の中では高い比率を占めている。さらに、労働人口の減少や、エネルギーコストの上昇などの社会課題を抱えている。2016年4月28日に日独政府間でIoTにおける連携についての覚書(MOU)が交わされたが、日独政府ともに「似た立場だからこそ共に解決できることがあるのではないか」という姿勢を強調していた※)。
※)関連記事:インダストリー4.0で具体化した日独連携、競合を越えた「つながる」の価値(前編)
これらの社会環境に加えて、日本とドイツの製造業における産業構造で非常によく似ているのが、中小・中堅企業の強さである。日本とドイツは中小企業の数が非常に多く、これらの企業群が大手製造業を支えているという構造になっている。特にドイツでは中堅・中小企業でも積極的に国外展開していることが特徴で、国の産業構造を支える役割を担ってる。
しかし、インダストリー4.0やIoTによる製造革新などが進む中、大規模なICT(情報通信技術)投資などが求められるようになった場合、売上高の規模が小さく財務体質が弱い中堅・中小企業は難しい。しかし、インダストリー4.0やIoTによる製造革新は、大企業や中小企業まで、通信技術面および企業間協力などにおいて「つながる」ことで実現する世界である。
そういう意味では、これらの中小・中堅企業のICT活用およびIoT(Internet of Things)導入などをいかにうまく支援し、早く巻き込んでいけるか、という点が日本にとってもドイツにとっても重要な課題となっている。今回の日独連携でも項目の中に「中小企業に対するIoT利用の支援」が盛り込まれたが、日独経済フォーラムでは、それぞれが進める具体的な支援策が示された。
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