第一は、乗用四輪EVの出展が少ないことだ。
EV台湾が立ち上がった当初は、さまざまな四輪EVの出展があった。中小企業は、ガソリンエンジン車からのコンバージョンが主流だったものの、台湾の大手自動車メーカー裕隆汽車は、SUVの「Luxgen7」や中型ミニバンのEVバージョンを出展し、実験車両による実証試験を台湾市内で行っていた。
だが、今回はそうした乗用四輪EVの出展は、民間企業からはゼロだった。その理由については、やはり世界的なガソリン価格の低下が挙げられる。過去5年間に渡るEV普及政策は着実に実行されたものの、生活者や一般事業者の目線では「どうしてもEVを買わなければならない」という気持ちになれず、市場が拡大しなかった。
その他の理由としては、中国市場の変化もある。台湾企業としては、自社で開発したEVの基礎技術や電装部品を中国向けに輸出したり、中国国内で量産することを考慮していた。だが、中国の中央政府が推進してきた全国25都市でのEV普及政策「十城千両」が不安定な動きを見せた。この政策が2013年に突然休止され、そして2014年から新たなる政策としていきなり復帰するという不自然さに対して、台湾企業のみならず、中国国内の自動車関連企業も困惑した。
第二は、「Eバイク」の伸び悩みだ。
「EVは仕方ないが、Eバイクはもっと増えていてもよいはずでは?」と、かなりがっかりした気持ちになった。台湾政府は、前述のEV政策を打ち出す前に、小型電動車両(LEV)の普及を目指してきた。その中核として、Eバイクと呼ぶ電動二輪車に関して産学官で連携した商品開発を行ってきた。
台湾の人口は、日本の約2割に相当する2340万人。小型バイクの保有台数は1200万台で、これは国民2人につき1台に相当する。その多くは、台北、台中、高雄などの都市部で通勤が通学で利用されている排気量125ccのスクーターだ。それらによる都市部の大気汚染対策の一環として、Eバイクへの代替を考案したのだ。そうした政府主導のLEV政策が、「EV台湾」の初期にはうまく連動していた。
そして今回、乗用や商用のEバイクや、充電済みのバッテリーを取り換える「易速達(ISUDA)」など、「EV台湾の常連」が数社出展していた。とはいえ、市場全体が拡大しているという実感は得られなかった。Eバイクとガソリン車との新車価格差が大きく、量産効果による価格低下の「良きサイクル」は生まれていないのだ。
第三は、リチウムイオン二次電池や、充電インフラ関連の出展少ないことだ。EVやEバイクの需要が伸びなければ当然、二次電池の供給も見込めない。以前は、さまざまな正極材と負極材の組み合わせや、セパレーターの展示があったが、そうした展示があまり目立たなかった。
筆者はこれまで、台湾のリチウムイオン二次電池の製造現場を何度か取材し、製品としてのポテンシャルの高さを実感してきた。また、産学官連携で進めてきた、くぎ刺し試験などによる内部短絡に対する安全性が高い「STABA」が世界市場で認知されることを期待してきた。それだけに、今回はとてもがっかりした。
また、充電インフラについても出展も少なかった。以前は、電子機器の大手Deltaが、日本が世界標準化を目指す直流の急速充電器規格「CHAdeMo(チャデモ)」を採用した製品を展示するなど、さまざまな事業者が出展していたものだ。今回、中国が独自に進める急速充電器用のコネクタやプロトコルに対応した機器の出展を期待したのだが、その姿はなかった。
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