ソニーのデバイス部門が赤字転落、大黒柱のイメージセンサー変調で増産見直しへ製造マネジメントニュース(2/3 ページ)

» 2016年01月29日 20時00分 公開
[三島一孝MONOist]

変調するスマホ向けイメージセンサー

 変動が激しいソニー内の各事業の中で、唯一ここ数年毎年大きな黒字をたたきだしてきた事業が、デバイス部門のイメージセンサー事業である。しかし、ここにきて大きく変調し2015年度第3四半期は、予想を大きく下回り営業赤字に転落している。電池事業の悪化による減損やカメラモジュール事業の立ち上げ失敗などの影響も大きいが、予想外だったのが、大黒柱となってきたイメージセンサー事業である。

photo デバイス分野の第3四半期業績動向(クリックで拡大)出典:ソニー

 同社のCMOSイメージセンサーはハイエンドのスマートフォン向けでは圧倒的な競争力を持ち、高いシェアを維持している。2015年度も上期までは想定以上の引き合いがあり、生産が追い付かず顧客からの引き合いを断る状況が続いていたという。しかし、増産体制を整えた秋口には市場環境が変調。顧客は戻らず需要も戻らない状況に陥った。さらに追い打ちをかけたのが大手顧客へのカスタム品である。

 吉田氏は「ある大手顧客に対するCMOSイメージセンサーのカスタム品は、そのまま他の顧客に提供ができない専用のものとなっており、開発に5カ月くらいかかる。そのため、供給不足時に増産体制を整えて、いざ供給できるようになった際に顧客側に需要がないという状況は業績的にも大きなマイナスになる」と述べる。

 これらの供給過多の状況に対応するため、従来予定していた増産体制を見直すという。2016年9月までに月産8万7000枚の生産体制にする予定だったが、このうち2割程度に当たる他社委託分を中心に、計画の後ろ倒しもしくは下方修正を行う見込みだ。

photo イメージセンサーの総生産能力の推移(クリックで拡大)出典:ソニー

スマホの潮目は変わった

 さらに懸念されるのが、この状況が一時的なものではないことである。ソニーではイメージセンサーの需要について「2016年度第1四半期からは回復する」としているが、従来のように圧倒的な収益力を維持するのは難しいという認識だ。

 吉田氏は「2016年度第1四半期については既に注文が入っているので、回復する可能性は高いと見ているが、その後のことについては分からない。当社としては『スマホの環境は変わった』という認識だ。ドル高と新興国通貨の弱体化、石油安の影響などで新興国メーカーの購買力が低下している。総合的に考えて、スマホのハイエンド市場は横ばいかもしくは減るという見通しで2016年度の計画は練り直しているところだ」と懸念点について語っている。

 ただ、中長期的にはデバイス部門を「成長けん引領域」としている位置付けについては変わらないという。「中長期的には、イメージセンサーを核とする位置付けについては変更するつもりはない。技術的な優位性は保持し続けている他、将来的に車載向けやIoTなどで広がっていくからだ。そこに向けて、顧客ベースの拡大や用途の拡大などへの取り組みを進めていく」と吉田氏はイメージセンサー事業の方向性について語る。

photo デバイス分野の営業利益の内訳推移(クリックで拡大)出典:ソニー

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