島津製作所は標準化を武器に、知財と組み合わせてシェア100%の例も製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

島津製作所はISO/TC107第36回総会の開催に合わせてメディアなど向けに国際標準化の取り組みについて説明した。

» 2024年11月22日 10時30分 公開
[齊藤由希MONOist]

 島津製作所は2024年11月18日、ISO/TC107第36回総会が島津製作所 三条工場(京都市中京区)で開催されるのに合わせてメディアなど向けに国際標準化の取り組みについて説明した。

 ISO/TC107は、金属および無機材料のコーティング技術に関する技術委員会で、めっきや腐食試験、化成処理、プラズマ蒸着、溶射、ほうろうなどの伝統的な被膜コーティングや膜厚測定法のISO規格の他、ALD(Atomic Layer Deposition)など先端的な被膜関連の規格提案が行われている。

 これに合わせて島津製作所は、温度環境制御下での樹脂上めっきの密着力測定法の国際標準化を提案する。自動車業界では、コスト低減や軽量化のため表面にめっきを施した樹脂部品の採用を進めている。金属部品からさらに置き換えていくため、耐久性や耐熱性を向上させた新たな樹脂材料やめっき技術が開発されていくとみられる。

 ただ、樹脂とめっきの密着性を定量評価する測定法や、自動車の使用状況を想定した−50〜+100℃以上での測定を規定した国際規格は存在しなかったという。そこで、島津製作所は、恒温槽の中で引っ張り試験を実施する測定法を新規格として提案している。恒温槽と精密万能試験機を用いて、銅めっきした樹脂の試験片の銅めっきを情報に引っ張り、樹脂との密着力を測定するという試験だ。

分析計測メーカーのデータ共通フォーマットに貢献

 島津製作所は2025年度を最終年度とする中期経営計画の中で、7つの経営基盤強化の取り組みを掲げている。そのうちの1つが国際標準化や規制への対応力強化だ。

 標準化や規制への対応を知財やマーケティングと組み合わせて総合的なビジネス戦略に組み込む「レベル3」を目指して、レベル0〜2のステップを設定。現在は、「主体的に規格策定や規制対応に取り組み、対応した分析手法の開発、それを広げるための標準化に取り組む」というレベル1から、「標準化や規制への対応を開発や販売と連携して戦略的に行う」というレベル2への移行段階にあるとしている。

 島津製作所 専務執行役員で標準化戦略などを担当する稲垣史則氏が幾つかの標準化活動の事例を紹介した。1つ目の事例が、2024年5月に制定されたJIS K 0200「計測分析装置の分析データ共通フォーマット」だ。

 自動車などで使われる複合材料の開発には、複数の材料のさまざまなデータを蓄積して統合的に解析するマテリアルズインフォマティクス(MI)が重要だとされている。ただ、分析計測メーカーも協力して多種多様な機器データを蓄積、集約する必要がある。島津製作所は日本分析機器工業会(JAIMA)のもと、同業他社と「データ共通フォーマット」のJIS原案作成に取り組んできた。

 今後は、取引先のマテリアルズインフォマティクスを支援するため、分析データの収集/解析システムを販売していく。また、海外製の計測機器にもこれらのフォーマットを展開するため、JAIMAとともにISO化にも取り組む。

マイクロプラスチックの前処理や分析方法に対応した製品群

 海や河川で問題になっているマイクロプラスチックに対しては、マイクロプラスチックの量を把握するための測定法や抽出/回収の前処理法の標準化を進めてきた。

 マイクロプラスチックの分析は次のように行う。まず、ニューストンネットで採取したサンプルは自動前処理装置で不要なものや余分なものを分解、分離し、候補粒子を抽出する。候補粒子は、実態顕微鏡で観察や計測を行い、プラスチックアナライザーで成分を分析する。これらに対応した製品が島津製作所のラインアップにあり、前処理や分析法を環境省のガイドラインに沿ってISO化した。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.