ライトアップされたモノをスマホで撮影すると、その名称や値段が表示される――そんなシステムを実現するのが、LED照明に情報を載せる「情報発信LED照明」です。
今回のテーマはLED照明に物品などのID情報を載せ、照らされた「モノ」をスマートフォンなどのカメラで撮影するとIDを認識、クラウド経由で関連データが手に入る「情報発信LED照明」です。RFIDリーダやバーコードリーダなどのように特殊な読取り装置なしで一般の人が利用できる、新しいID情報付与技術の誕生です。
LED照明の色成分をコントロールして、人の目には分からない微妙な色変化でデジタル情報を発信する技術。これまでLED光を直接通信に利用する技術(可視光通信)はあったが、特殊な受信装置が必要で用途が限られていた。2014年11月に富士通研究所が発表した「モノに情報を付与できるLED照明技術」は、スマートデバイスなどのカメラと専用アプリだけで、LED照明に照らされた物体からID信号を受け取り、その情報をカギにクラウドから関連情報を取得する新しい情報配信手法を提起した。
LED照明は、かつての青色LED光を黄色蛍光体に通すことで疑似的に白色を表現する方式から、R/G/B 3色のLED光を混合して白色を表現する方式に進化してきた。1個のLED照明で明るさを変えたり、昼光色から電球色などへと自由に色を変化させたりできるようになったことはご存じの通り。その3色混合の光のRGB各色を時間軸上で、人間の目には区別がつかない程度に変化させれば、照明光にデジタル情報を載せることができるのではないか。この発想が「情報発信LED照明」の出発点だ。
まずは、実際の情報取得の様子をデモシステムで見てみよう。図1はショップにおかれたマネキンにLED照明を当てている例として見てほしい。店舗を訪れた客は、自分のスマートフォンにインストールされた専用アプリを起動して、マネキンに向けてシャッターを切るようにボタン操作を行う。するとほんの少しの間をおいて、スマートフォンにマネキンが着ている洋服のブランドや価格、素材などの関連情報が表示される。デモでは期間限定割引キャンペーンの対象商品であるという特典情報が出てきた。
もう1つのデモは、美術館・博物館などの展示品に関連する情報発信を想定したものだ。図2のように浮世絵の展示にLED照明を当てているところを、先ほどと同様にスマートフォンのカメラで撮影すると、今度は作品名、作者、制作年、その他の関連情報がスマートフォンに表示された。
ちなみに、デモシステムのLED照明は図3のような一般的なカラー調光可能LEDを多数並べたタイプのスポットライトを利用していた。しかし多数のLEDの利用は必要条件ではない。カラー調光可能なLED電球1個だけでも情報配信は可能ということだ。
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