燃料電池は、燃料の水素と空気中の酸素を化学反応させることで電力を生み出している。水素極では、水素分子が電子と水素イオンに分離され、ここで取り出された電子が電力のもとになる。一方、空気極では、水素極から電流として移動してきた電子と水素イオン、空気中の酸素が化学反応して水が生成される。
そして、水素極と空気極の化学反応を促進する触媒として用いられているのが白金だ。実際に使われているのは、数十nmサイズのカーボン微粒子を担体に、数nmサイズの白金微粒子を担持したものだ。
一般的に触媒が化学反応を促進する性能は、表面積が大きいほど高くなるといわれている。燃料電池が発電する際に発生する白金微粒子の粗大化は、触媒の表面積の減少につながるので、これを避けられれば、燃料電池の発電効率の低下は起こりにくくなるというわけだ。
そこで求められるのが、白金微粒子が粗大化するメカニズムの解明だ。燃料電池が発電する際に、白金微粒子が粗大化していくプロセスを観察できれば、そのメカニズムが分かり、粗大化を起こさない技術の開発も可能になる。
しかし従来は、発電前の初期状態と発電後の反応性低下後の白金微粒子を抽出して、それぞれを比較する定点観察しかできなかった。定点観察では、白金微粒子が粗大化していることは確認できても、どのように粗大化するかは分からない。
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