ホンダが3モーターハイブリッドの「レジェンド」で目指した“走りへの夢”今井優杏のエコカー☆進化論(17)(3/4 ページ)

» 2015年04月22日 10時00分 公開
[今井優杏MONOist]

コーナーでアクセルを緩めなくていい「SH-AWD」

 では、レジェンドはどうでしょうか。

 どうしてレジェンドはさらに進化したハイブリッドシステムを搭載しているのに、「レジェンド ハイブリッド」とならなかったのか。

 そこにこそ、ホンダの本気が存在していたのです。

 まず、根本的なことを言えば、この3モーター式ハイブリッドは走りのためのシステムであるということ。燃費は走りの次で、まるでサメが水を切り開くような鮮烈なモーターの加速、ありあまる電気的なトルクを走りに生かしたのが、まさに今回の3モーター式四輪駆動ハイブリッドシステム「SPORT HYBRID SH-AWD(以下、SH-AWD))」です。

「SH-AWD」の構成 「SH-AWD」の構成(クリックで拡大) 出典:ホンダ

 フロントには新開発の排気量3.5lのV型6気筒直噴エンジン。もう、それ聞いただけでも「本気やん自分!」と走りに想像がつくのですけども、それに加えまずモーターを1個内蔵した7速DCTが置かれます。フロントのモーターは最高出力35kWの高出力なモノ。7速DCTとのマッチングはスポーツドライビングには申し分ない役者がそろったといえるでしょう。

 さらにリヤには最高出力27kWのモーターを左右それぞれに配置しました。これによって左右輪のトルク配分を自在にコントロールします。つまり、コーナリング時にドライバーの「曲がりたい」「戻りたい」という意思をステアリング舵角や挙動から察して、外輪には促進力を足し、内輪には戻し方向のトルクを適度にかけることでコーナリングをスムーズに助けてくれるというもの。コーナリングスピードが向上するため、かなり攻めた走りができるようになると思います。

 これのすごいところは、モーターが左右にそれぞれ配されているためにエンジントルクや前輪駆動力に頼らなくても、独立して駆動力を左右それぞれ制御できること。さらに減速回生時のモーター抵抗を制御していて、つまりアクセルを抜いていてもトルクベクタリングが可能になったのです。つまりそれは全車速域で安心してコーナリングをサポートしてくれるという意味でもあります。

「SH-AWD」によるトルクベクタリングの例 「SH-AWD」によるトルクベクタリングの例(クリックで拡大) 出典:ホンダ

 ココ、先代ではアクセルペダルを踏んでいるときにしか有効ではなかったそうですが(エンジントルクをプロペラシャフトを通じて後輪に伝え、さらに左右に振り分けていたために、プラスのトルクしか使用できなかったのです)、皆さん、自分のコーナリング時の右足を思い出してください。タイトなコーナーに差し掛かるときって、アクセルペダルを緩めていませんか?

 コーナリングの際には慣性の法則が働くので、クルマはカーブの外側に外側に出て行こうとします。このときにアクセルを緩める(もしくはブレーキを少しかける)と、鼻先が沈み、荷重が移動してターンインをしやすくなりますね。きっと皆さん、それを自然とやってのけていると思うのです。ですから、コーナーの途中ではアクセルを抜いていること、多いと思います。そんな状況下でのクルマ側のヘルプは、疲労の軽減だけでなく次のコーナーへめがけて元気に加速をしていけるという意味でも、意義のあるものだと感じました。

 それら3つのモーターを、センターコンソール内に納まったパワードライブユニットが協調制御し、あらゆる領域でスポーティーな走りをサポートしてくれるというわけ。

 もう、もう、超速い!ですよ! ちょっとアクセル踏んだだけでビュン! ですよ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.