通常より1年以上遅いタイミングでアクアへの採用が決まった新型モーターは、技術的に未完成だった部分もあり、その開発は難航したという。しかし嵯峨氏は、新たな開発体制を敷いた効果により、この難局を乗り切ることができたと説明する。「トヨタとデンソーが協力し、設計と生産を同時に行ったことで開発が成功した。新体制によりこの新型モーターは8カ月の間に3回の試作と同時に、量産設備の設計と品質の確保を行うことができた。もし設計を外注していたらこのレベルの開発は行えなかった」(嵯峨氏)。
また嵯峨氏は、この新たな開発体制がもたらした効果は、アクアのハイブリッドシステムの小型化を成功させただけではないと語る。「これまでトヨタとデンソーは、メーカーとサプライヤという両社の立場の違いにより、十分に良い関係だったとは言いきれない部分もあった。しかし、このアクアの開発を通じて、お互いに腹を割って話せる良い関係を構築することができた。また、こうした厳しい開発環境の中で多くの人材を育成することもできた」(嵯峨氏)。
嵯峨氏は講演の最後に、これまでトヨタのハイブリッドシステムの開発リーダーを務めてきた経験から「個人の能力など、良い面を伸ばし、組織として団結していくには人間的なマネジメントが重要であると感じた。リーダーには、部下になめられない総合的な技術力、組織や人員を惹きつけて動かす人間的パワーが重要。組織や個人の能力やアウトプットの質を高めることで、さらなる挑戦につなげていきたい」と語った。
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