アクセンチュアは、新たに日本企業がASEAN企業のM&Aを行う際に効果を最大化する支援サービスを開始する。
コンサルティング企業のアクセンチュアは2014年12月15日、東京都内で会見を開き、M&Aを成功に導くポイントなどについて解説するとともに、日本企業がASEAN地域の企業のM&A(合併と買収)を行うのに、より大きな成果が残せるよう支援するサービスを開始することを発表した。既に2014年9月にはシンガポールにM&A専門拠点をオープンしており、活動を本格化させる方針だ。
ASEANは2015年末までにASEAN経済共同体(AEC)を設立するなど、新たな経済圏として注目を集めている。日本企業もここのところ海外投資を積極化させる動きは広がっており、2013年の日本企業による地域別の海外企業買収額を見るとアジア地域の企業が20%を占めており、さらにアジア企業の中で91%をASEAN地域の企業が占めているという(図1)。
しかし、一方で日本企業のM&Aは成功しているとは言い難い状況だ。アクセンチュアの調査によると海外投資に対する過去3年間の売り上げと利益が「期待通りだった」と回答した企業の割合は、アジア平均が28%だったのに対し、日本企業は12%と最低となっている(図2)。さらにM&Aの成功率を株主投資利回り(Total Return to Shareholders)で評価した場合、価値創造に成功した企業は61%となり、39%がM&A後「企業価値を下げている」という状況になっている(図3)。
これらの海外投資、M&Aで成果が出なかった理由について「可能性として考えられるのは2つある。1つは買収価格が高すぎたということ。もう1つが、買収後にその買収企業が狙った効果をきっちりと出せるような運営ができなかったというものだ」とアクセンチュア 戦略コンサルティング本部 M&Aプラクティス 日本統括 マネジング・ディレクターの横瀧崇氏は語る。
ただ、前者の「買収価格」についてだが、2013年〜2014年前半までの1842件の公開M&A案件を調べた結果、取引価格に対するEBITDA(利払い前税引き前償却前利益)の倍率はグローバルの全案件が13.9倍だったのに対し、ASEAN企業を対象としたものが12.1倍となっており「ASEANのM&A案件がそれほど高いとはいえない」(横瀧氏)という結果が明らかとなっている。
つまり「日本企業は、ASEANの企業のM&A後に、組織内で早期に利益を最大化させるための運営手法が確立されていないという点が問題点として浮かび上がる」と横瀧氏は指摘する。
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