梶本氏は、モノづくりの視点から見たIoTサービスの実現に向けた課題の1つとして、無線通信規格の複雑化を挙げた。「現在、IoTサービスに用いられる無線通信規格には、NFC、Bluetooth、ZigBee、Wi-Fiなどさまざまなものが混在している。
さらに、国ごとに認可周波数も違うため、状況はとても複雑になっている」(梶本氏)。
一般的に音声や映像を伝送する場合には、周波数の高い無線通信規格が有利である。しかし、部屋の間が壁や階段などで区切られ、無線通信にとって“見通しの悪い”住宅内部では、回折性の高い低い周波数の無線通信規格を用いた方が効率が良い。日本では920MHz帯の通信仕様がARIB STD-T108の規格により、1時間当たりの通信時間は360秒以下でなくてはならないといった規格面の制約もある。また、家庭ごとに間取りもゲートウェイも異なるため、各企業はとても複雑な環境への対応が求められる。
さらに梶本氏は、「10年以上のライフサイクルを持つ住宅の建築材料や、家電などの短期にバージョンアップを繰り返すデジタルインタフェースをどう共存させるのかも重要な課題となる。そして、モノをインターネットに接続することをユーザーが楽しいと感じるかも考慮する必要がある」と語った。
また梶本氏は、IoTの価値を最大限に高めるためには、センサーから得たデータに対して、メタデータを付与するための標準的なルールの策定が必要であるという点も主張した。「センサーからデータを取得するだけでは何も意味がない。例えば『これは私の家のリビングのエアコンの温度センサーの情報』というように、メタデータを付与する必要がある。しかし、こうしたルールが決まっていないのが現状。ユーザーの利便性を考慮して、多くの企業と連携してルール作りを行う必要がある」(梶本氏)。
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