通勤通学中にも取り組める、各企業における設計審査の定型質問に基づいた問題集。今回も耐震補強材の「股裂き」対策ですが、ちょっぴりやっかいな問題です。
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。甚さんいわく「イマドキな若者」。機構設計者。通称、良君
沢田恵梨香(さわだ えりか)
ADO製作所 PC事業部 設計2課に勤務する派遣社員。良君のい〜加減な設計を製図でしっかりフォローする優秀な設計アシスタント。製図専門学校卒。通称、エリカちゃん
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
前回出題した【問題2】は以下でした。良いアイデアは浮かびましたか?
ちなみに、こいつにかかる曲げモーメントは、こんな感じ(図1)。……しかし、これいじわる問題ですね。答え教えてください。
転職の試験が近いんですよ。お願いですから教えてください。
転職……、寂チーっ!!
しょうがねぇなぁ。ヒントは「イカの頭を切れ!」だ。図2のこれでどうだぁ、あーん?
んなっ! 何これ? 裂きイカ? これが対策? 余計にひ弱になった気がしますよ?
そんなこたねぇぞ。実は、実務というよりも、学問的な問題になるんだがよう。図3にある応力分布図を見てくれ。
これ見てたら分かったぞ! 学問なら僕にお任せ! その先は僕が解説します。
図1のように、L字型板金に曲げモーメント(曲げる力、曲げようとする外力)が加わると、図3のように隅に応力が集中します。このとき、前回で説明した「圧縮応力」と「引張応力」で「応力分布図」が描けます。直線と曲線がクロスしたポイントが、子どものときによく公園で遊んだシーソーの支点と思ってください!(ドヤァ)
支点がL字型板金の角に寄っているので、釣り合いを取るためには、隅にはまるで横綱・白鵬のような重量級の体重が必要です。この体重でクラック(ヒビ)が入ってしまうのです!(ドヤァ)
そこまでは分かりました。それで、「裂きイカ」、じゃなかった……、「イカの頭を切れ!」ってなぁに?
図3のように、まるでイカの頭を切ったようにL字型板金の角を切断すると、シーソーの支点が、直線の中央部へ移動するんだ。
ああ、そうだな! 釣り合いを取るための白鵬級の体重は不要になって、一般人の体重で済むってわけだ。完璧な対策とはいいがたいが、少なくとも、緩和はできるだろうな。
実はこのとき、良君の表現にちょっと違和感を覚えた。正しくは、「シーソーの支点を直線の中央部へ移動するように、L字型板金の角を切断する」になるな。
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