本格的なものを購入すると高価なので、ここでは簡易的ではありますが土壌湿度センサーを自作する方法を紹介します。
構造はとても単純です。2本の電極を特定の間隔で土の中に差し込めばよいだけです。これにより2本の電極間の抵抗が、土の湿り具合に応じて変化するという仕組みです。
注意が必要なのは、土の湿り具合が同じでも電極の間隔や土に接する面積が変わると抵抗も変化することです。そこで何らかの方法で電極の間隔を固定する構造が必要です。
まずはどのくらいの間隔が適当なのか、電極を2本、適当な間隔で土に突き刺してみて抵抗値を計ってみましょう。この実験にはどうしてもテスターが必要です。まだ持っていない読者でこれを機に電子工作を始めるのなら、この先、必須のアイテムですので入手をお勧めします。
取りあえず簡易的なものかつ、身の回りにある材料で、実験を始めることにしました。庭から採取した土に電極をさして、乾いた状態と湿った状態の抵抗変化を測定します。
針金を半分に切ります。これで10cmのものが2本できましたね。次に空いたプリンのカップに七分目ほど土を入れます。採取する土はなるべく乾いた状態のものを選びます。乾いた土を湿った状態の土にするには水をかけることによって容易にできますが、逆に湿った土を乾かすのは大変です。
土に電極となる針金を立てます(図1)。筆者の場合は電極が3cmほど土に埋まるように、また両電極の間隔は2cmとしました。両方の電極にそれぞれミノムシクリップを接続し、それぞれの片一方をテスターのプローブにつなぎます。テスターのダイヤルは抵抗が測れるモードに切り替えておきます。
このように土壌の湿り気で電極間の抵抗値が変わることが確認できました。では、このセンサーを前回作成した光センサーの代わりに接続してみましょう。
しかし、このままではセンサーの値を音量の変化として取り出すことはできません。前回の光センサーは光により電圧を発生させるタイプのセンサーでした(この連載記事では電圧系のセンサーと呼ぶことにします)。それに対して、今回のセンサーは電圧ではなく抵抗値が変化するタイプです。これを抵抗系センサーと呼ぶことにしましょう。
抵抗系センサーを前回作成した電圧/音量変換回路に接続するにはどうすればよいでしょう。そのためにはいったん抵抗の変化を、電圧の変化に変換する必要があります。そこで役に立つのがオームの法則です。
V=RI V:電圧 R:抵抗値 I:電流
抵抗値を電圧に変換する回路(図2)をご覧ください。3V側にセンサーを接続し、GND側に100KΩの抵抗を接続します。その両方をつないだ間から電圧を取り出します。行った実験をもとに、抵抗値は土の湿り気に応じて30KΩから1000KΩの間で変化するものとします。
まずセンサーの抵抗値が「1000KΩ」場合の出力電圧を計算してみましょう。センサーの抵抗値をR1、固定抵抗をR2とします。
V= R1・V/(R1+R2)
V = 3V×100KΩ/(1000KΩ+ 100KΩ)
≒0.27V となります。
次にセンサーの値が30KΩの場合の電圧出力を計算します。
V = 3V×100KΩ/(30KΩ+ 100KΩ)
≒2.31V となります。
このように土が乾いた状態から湿った状態で、0.27Vから2.31Vまで電圧が変化します。この回路の出力を、前回作った電圧音量変改回路の光センサーの代わりに接続します(図3)。
黒と赤のミノムシクリップをマイク端子に、黄色と緑のミノムシクリップをセンサーの電極にそれぞれつなぎます。この回路では土の湿り気が多くなるほど音が大きくなります。センサーと固定抵抗を逆に置き換えると、土が乾くに従って音が大きくなります。
できればここでPCへ接続する前に、クリスタルイヤフォンなどで音量の変化を確認したいところですが、土は一度湿らせると乾かすのに時間がかかりますので、一発勝負でPCに接続してみましょう。
それでは以前に作ったオシロスコープで土壌の湿り具合の変化を観測してみましょう。図4は土の湿り気の変化をオシロスコープで捉えた画面です。最初は音量の値が10前後で推移していますが、途中で100近くまで音量の値が上がっているのが分かります。ちょっと大目の水を一気にかけたので値が急上昇したグラフになってしました。少しずつ水をかければ徐々に音量が上がっていくグラフになったかもしれませんが、とにかく土が湿ると音量が上がることは確認できました。
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