2010年には、e-CRBをさらに進化させた「次世代e-CRB」の開発が始まった。既に、2013年から中国の広汽トヨタで運用が始まっており、順次展開を広げていく予定である。次世代e-CRBを開発する上での改善点は、「顧客から見たときの滞留=待ち時間の削減」(友山氏)である。そして、待ち時間の多くが、見積書や注文書といった印刷物の作成によるものが多いことが判明した。
次世代e-CRBでは、この印刷物の作成をはじめとする顧客の待ち時間を削減するため、従業員の持つタブレット端末に全ての情報を表示できるようにした。友山氏は、「紙で作成した情報は、作成した時点から滞留する」と述べる。またサービスオペレーションは、顧客の車両に搭載するテレマティクス端末を用いて状態を管理し、適切なタイミングで検査などの案内を行えるという。つまり、次世代e-CRBに、ディーラーの全ての情報が集約されることになるわけだ。
しかし次世代e-CRBは、店舗単体の業務改善だけを目指して開発されたわけではない。「自動車の生産から顧客への納車まで、全てのプロセスでの改善が真の狙い」(友山氏)というのだ。その狙いを象徴するのが、次世代e-CRBによって実現した販売物流統合管理システム「SLIM」である。
SLIMは、調達物流、生産、完成車物流、販売店という、造りと売りをつなぐ“かんばん”である。販売現場のリアルタイムの情報を生産や物流に反映するためのものだ。SLIMで管理する情報は、巨大なディスプレイの「SLIMモニター」上で見える化されており、各プロセスでのリードタイムや滞留を監視できる。広汽トヨタでは、毎週の役員会議を、SLIMモニターの前で全ての情報を確認しながら行っている。これによって、「売れるものを売れる分だけ造る、運ぶ」(友山氏)を実現できるという。
友山氏は、「この、『売れるものを売れる分だけ造る』を実現している業種がある。すし屋だ。トヨタもすし屋のようになりたい。『クラウンピンク、1つ』という注文を受けたら、即座に『はいお待ち』と出せるようになりたい」という望みを挙げた。
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