もう1つ、NICT ワイヤレスネットワーク研究所の取り組みとして展示していたのが、WINDS用小型車載局だ。
これは、超高速インターネット衛星「きずな」を用いた衛星通信用車両で、時速100kmで走行しながら24Mbpsの速度でデータ通信が行えるのが特徴。「従来も車載局と呼ばれる設備は存在していたが、自動車を停止させた状態で通信を確立するタイプが多かった。これに対し、WINDS用小型車載局は時速100kmで走行しても、人工衛星の位置を自動追尾しながら通信を確立し続けられる。また、周波数の高いKa帯を用いることで高速通信を実現している」と説明員。
WINDS用小型車載局のベース車両は、トヨタ自動車の「ハイエース」。車両上部(天井部)には、衛星用アンテナの他、HDカメラ、LED照明、Wi-Fiアンテナなどを搭載。HDカメラとLED照明は一体化しており、最長7mまで伸縮可能なポールの先端に設置されている(走行中は縮めた状態で利用)。HDカメラは12倍ズームまで対応しており、日中であれば1〜2kmまで先のものが判別できる(夜間はLED照明を利用し、500m程度までなら確認可能)。「例えば、走行中にHDカメラで周囲の状況を撮影。その記録をリアルタイムに災害対策本部や後発部隊などに共有することができる。また、インタフェースがイーサネットなので、TV会議システムなどを活用した迅速なコミュニケーションも行える」(説明員)という。
主な利用目的は、救援活動の支援(災害現場と本部との通信手段としての利用)だが、車両後部にWi-Fiのアクセスポイントが搭載されているので、情報孤立地域にいる被災者に通信手段を提供することも可能だ。
東日本大震災のように広範なエリアで通信が途絶えるケースもある。こうした場合には、前ページで紹介した小型無人飛行機による災害時無線中継伝送システムと連携して、衛星通信を用いたネットワークインフラを迅速に構築することも可能だという。ちなみに、車両上部に設置されているアンテナシステムはモジュール化されており、取り外しが可能。船舶にも搭載できるようになっているそうだ。
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